ジャマイカ戦の4ゴールを徹底検証――明らかになった酒井宏樹のスローインの有効性

カテゴリ:連載・コラム

河治良幸

2021年06月13日

ディフェンスの意識を分散させた堂安のバックステップ

1点目と4点目の起点となった酒井のスローイン。距離の離れた味方に確実に投げられるだけに、非常に有効だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 ジャマイカ戦は、東京五輪への“サバイバル”の位置付けだった今回のU-24代表活動でもラストアピールとも言えるステージ。同時にオーバーエイジ3人を含めたチームの融合を図る場でもあり、選手たちにも様々な思いがあったはず。

 ジャマイカは前回のガーナと違い、れっきとしたA代表であり、すでにセルビアのA代表と対戦していたことから決して簡単な相手ではなかった。やはり伝統的なジャマイカのイメージ通りに身体能力が高く、スピードもある選手たちが揃っているが、新鮮なのはかなり丁寧に自陣からビルドアップしてくることだ。

 単にスピードやパワーを前面に押し出してロングボールを当ててくるのではなく、しっかりとつないで多角的に起点を作ってくる。それがU-24日本代表にとってはやりやすさになっていた。前からプレスをかけやすく、そこを破られても遠藤航と田中碧のボランチやオーバーエイジの吉田麻也と酒井宏樹を擁する4バックが止めることができる。

 一方のディフェンスはかなり人に強くくる分、日本が相手の守備を引きつけながらボールを失わずにつなげれば、周囲にスペースが生じてくる。一つひとつのつなぎにボールロストのリスクはあるが、チャンスにつながる可能性もあるなかで、いかに勇気と攻撃の共有を持ってゴールに迫れるかがポイントだった。

 日本が決めた4得点の他にも、久保建英のポスト直撃弾、堂安律のシュートが相手GKバーンズのビッグセーブに阻まれたシーンなど、惜しいチャンスはあったが、得点場面で選手がどう関わっていたかを検証したい。

 1点目は酒井のスローインを右サイドで受けた久保がドリブルで侵入し、マーカーのティルトをはじめ相手のディフェンスがブロックに来たところを左足一閃。GKを含む4人の股下を破るというスーパーゴールだったが、このシーンでは前田大然と三笘薫がボックスに入り込んでおり、さらに久保をインサイドから追い越す形で堂安が走り込んだ効果も大きかった。
 
 興味深いのは酒井が投げた方向に久保が中央から斜めに走って守備のギャップを突いたことで、堂安はその動きの流れで生じたインサイドのスペースに走っている。そこからバックステップを踏んでフリーになり、ディフェンスの意識を分散させる効果を生んでいる。ジャマイカのディフェンスがGKをのぞいて6人、日本は4人という状況だったが、ポジショニングのバランスが良かったために厚みがあった。

 2点目はゴールを決めた遠藤がインターセプトしたところから、三笘を経由して堂安、田中、そして最後は遠藤が技ありのシュートを決めた。もちろん直接パスで絡んだ3人の貢献は見逃せないが、遠藤がボールを受けるところでプルアウェイをしてディフェンス(ハーディング)を右に引きつけた前田と、遠藤の外側をオーバーラップすることで、遠藤の手前のブロック(マリアッパ)を左に剥がした旗手怜央の動きがなければ、あれほどシュートコースが綺麗に割れることはなかっただろう。

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