「浦田監督はいつもニコニコしていて、『チャレンジしろ』と僕らの背中を押してくれた」と、伸び伸びとプレーできたことで、彼のベースとなる個で考えて発想を持って打開するプレーが磨かれた。

　そんな彼に転機が訪れたのは高３のインターハイ予選だった。ベスト16で昌平と対戦し、０-３の完敗に終わったが、この試合で流通経済大の大平正軌コーチの目に留まった。大平コーチは埼玉平成の試合の後に登場する浦和学院のMF安居海渡（流通経済大、浦和レッズ内定）の視察に来ていたが、トップ下でイマジネーションを発揮する佐々木の姿に目を奪われ、すぐに声をかけた。

「まさかあの流通経済大から声をかけてもらうとは思わなかったので、驚き以外何物でもありませんでした」
 

　無名の存在だったが、いきなりの大学サッカー界のトップクラブからの誘い。普通の人間であれば怯むところだが、彼の心にさらなる火が灯った。
「プロになりたいという気持ちはずっと持っていたし、こんなチャンスは逃しちゃいけないと思いました。その後の８月のインターハイで流通経済大柏が全国優勝をして、『このメンバーの何人かは流大に来るだろうから、一緒にプレーしたいな』と思いました」

　実際にこの優勝メンバーから宮本優太（浦和レッズ内定）、菊地泰智（サガン鳥栖内定）、薄井覇斗と錚々たるメンバーがやってきた。他にも全国から有能なタレントたちが集結し、入学当初はその存在感に圧倒された。

「最初はもう地獄でした。１年生チームの紅白戦にすら出られませんでしたし、泰智や優太とか多くの同級生が既にトップの試合に出て活躍していて、もういきなり取り残された気持ちでした」

　それでも彼の心は折れなかった。「そうなることは最初から分かっていたし、一番下から這い上がるしかないと思っていた」とモチベーションを落とさずにプレーし続けた結果、２年の夏に思ってもみないポジションでチャンスがやってきた。

「コーチから『サイドバックをやってみろ』と言われて、試合に出られるならどこでもいいと全力でプレーしたんです」