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“職業Jリーガー”という競争社会を生き抜くには? 村井チェアマンが示す「成功へのキーファクター」

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2021年05月31日

折れた心をリペアできるリバウンドメンタリティ

村井チェアマンは新人研修で「厳しさ」と「打開策」の両方をデータに基づいたアドバイスとしてルーキーたちにおくる。写真:サッカーダイジェスト

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 ただ、「厳しい」を連呼しているだけでは意味がありません。競争世界で生き残るには何が必要か、新人研修ではそうした方向性も示します。

 もちろん、その方向性を導き出す過程でも徹底的に分析しました。最初は選手のプロファイリングをしたり、指導者に選手の印象を訊いたり、選手を預かるコーチの教育スタンスを教えてもらうなどして成功の要素を炙り出そうとしましたが、どうも技術力やフィジカルとの相互関係が見えてきませんでした。そこで50項目の職業適性検査(持続力、協調性、探求心、分析力など)を改めて実施したんです。結果、成功体験と極めて結びつきが強かったファクターが傾聴力ということが分かりました。

 なぜ傾聴力なのか。サッカーはミスが付き物のスポーツで、いくら自分がフェアプレーに徹しても相手にファウルされて怪我をしてしまうケースもあります。たとえリーグ戦で大活躍しても、代表監督がデザインするサッカーにハマらなければ招集されません。極めて理不尽な故に心が折れやすい競技なのです。それでも実際に長く活躍できる選手がいて、そんな彼らには強靭なリバウンドメンタリティが備わっていました。そのリバウンドメンタリティを養ううえで重要なのが傾聴力です。

 自ら学び、努力し、それでも修正できない部分は周囲のアドバイスに耳を傾けて解決する。新たな課題が出たら、また努力し、周囲の助言に耳を傾ける。その繰り返しによって、リバウンドメンタリティは形成されるというのが、代表選手のヒアリングも通して導き出された結論です。

 傾聴力と同じレベルで必要なのが主張力です。人の話を熱心に聞くだけでなく、それに対して自分の考えを述べていくのが大事です。もちろん、言いたいことだけ伝える自己中心的なスタンスはダメですよ。「私はこう思うけど、あなたは?」と意見も求める姿勢が好ましいです。傾聴と主張の両方が良い感じで噛み合った時にはものすごくスピーディにいろんな情報が入ってきますから。そうした情報が入ってくれば、いわゆる人間力も豊かになって内面が磨かれます。優れた技術やフィジカル、闘争心ももちろん不可欠ですが、挫折を乗り越えるためには総称して人間力がなにより重要なのです。
 
 今Jリーグでは、各クラブのジュニアユースに所属している14歳の選手たちを対象に「よのなか科」というトレーニングを実施しています。「よのなか科」とは、和田中(東京都杉並区)の元校長である藤原和博さんが提唱している「学校で教えられる知識と実際の世の中との架け橋になる授業」のことで、身近な視点から世の中の仕組みなどを考える教材をJリーグ版として提供しています。

 受講者には、例えばサッカーを取り巻く人たちの仕事を思いつくかぎり挙げてもらいます。ユニホームを作る人、芝生をメンテナンスする人……。そうやって、試合運営は選手たちだけでは成り立たない現実を知ってもらうのです。いろんな方々の努力や苦労があって、初めて選手たちはピッチに立てる。それを理解できれば、一種の責任感が芽生えるはずだと考えています。

 現代社会の仕組みに目を向けず、「自分は上手いから」と自己中心的にプレーしていれば間違いなく壁にぶち当たります。一方で、いろんな使命感を背負っている選手はここぞという時に足がスッと伸びたり、相手への対応が早かったりします。大事な局面で力を発揮してこそプロですし、プロになるためのベース作りとして重要なのが「よのなか科」と個人的には位置付けています。

<プロフィール>
村井 満(むらい・みつる)/1959年8月2日生まれ、埼玉県出身。浦和高在学中はGKとして冬の選手権予選にも出場した。早稲田大卒業後、リクルートに入社。そこで執行役員を務めるなどして、14年1月31日、大東和美氏のあとを受けて第5代Jリーグチェアマンに就任し、現在に至る。

取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

※本稿は、サッカーダイジェスト6月10日号に掲載された「J’sリーダー理論」の内容を加筆したもの。

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