“職業Jリーガー”という競争社会を生き抜くには? 村井チェアマンが示す「成功へのキーファクター」

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2021年05月31日

「個人事業主」の仕組みなどを説明しても…

代表実績も十分な岡崎や本田がJリーグで結果を残せた背景には、チェアマン曰くある共通点が存在する。写真:サッカーダイジェスト

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 ルーキーがプロサッカー選手の心得などを学ぶ「Jリーグ新人研修」。村井チェアマンはそこでの講義で、Jリーガーが如何に過酷な職業かという現実を突きつけつつ、一方で厳しい競争を勝ち抜くうえで肝となるスキルを示してきた。優れた技術やフィジカル、闘争心という類のものとは一線を画す、そのスキルとは──。チェアマンの見解に耳を傾けてほしい。

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 Jリーガーは、エリートの中のエリートしかなれない職業です。おそらく大学入試で東大に合格するよりも難しい。それぐらいの関門を突破してプロになるわけですから、才能は間違いなくあります。ただ、その才能だけで成功できるかと言えば、必ずしもそうではありません。

 プロになった時点でまず、個人事業主という競争社会に放り出されます。個人事業主は社長も従業員も自分で、自身の商品価値を自らアピールしないといけません。高校や大学まではサッカー漬けだった生活がより社会と密接する生活様式になるわけで、ここでマインドチェンジできるかは重要なポイントになります。

 サッカーが下手でも卒業できる高校や大学と違って、Jリーグは結果次第で1年以内に解雇される恐れもあります。だから私は新人研修の講義で、美辞麗句ではなく厳しい現実を伝えるようにしています。それでプロとしての自覚、覚悟を芽生えさせることができれば理想的ですが、ルーキーの皆さんに「個人事業主」の仕組みなどを説明しても、「なんのこっちゃ?」と彼らの心に刺さらない可能性があります。

 ですので、厳しい現実を分かりやすく受け入れてもらう方法を探しました。そして行き着いたのが、客観的なデータの提示です。私が初めて新人研修で講義をした2015年、当時のルーキーおよそ120名に示したのが「05年にプロ入りした選手たちの10年間の出場記録」でした。05年と言えば、本田圭佑選手や岡崎慎司選手が新人で、そうしたプレーヤーの実績を赤裸々に数字で表したのです。
 
 1シーズンでこなすゲーム数は、J1のクラブならリーグ戦とカップ戦を併せて大体40試合。10年間となれば、選手はマックスで約400試合に出場できます。それを説明したうえで、受講者にこう質問したんです。「05年にプロ入り選手たちは、この10年間で平均何試合出場したか? 半分の200試合、300試合、それとも?」と。答は0~50試合(該当選手は49名)でしたが、正解者はいませんでした。

 次に受講者に訊いたのが49名の内訳です。「(1)0試合、(2)約10試合、(3)11試合以上のどれが一番多いですか?」と質問すると、回答の大半が(3)でした。正解は(1)で、21人もの選手が公式戦のピッチに立てないまま荷物をまとめて去っていく。講義をここまで進めると、会場はたいていシーンとなります。

 プロの舞台に立ち、いずれは日本代表で活躍したいと前途洋々たる未来を思い描いている矢先に、新人研修でそんな甘い世界じゃないよと出鼻を挫かれる。それも、データという真実によって。これはある意味、彼らの目を覚ますためのショック療法です。根性論や道徳的な事柄を並べるよりも、事実を伝えたほうがインパクトはある。だから、私は徹底的にデータを分析するやり方で彼らの心に訴えようと思ったのです。ちなみに、2006年のルーキーを対象に調べたデータ(10年間の出場記録)も同じ傾向にありました。
 
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