一方の星稜は、河﨑護監督はベンチに入らず、屋内練習場の窓から戦況を見守っていた。選手権同様に監督不在の状況が続き、木原力斗コーチが指揮を執っている。河﨑監督の復帰は夏以降になりそうで、難しい状況ではあるが、チームとしては着実に成長してきている。
 
「優勝メンバーが（レギュラーでは）GK坂口璃久以外おらず、メンバーがガラッと入れ替わった。力は昨年より落ちるかもしれないけど、その分、チーム内競争が激しくなる。そこに期待したい」
　河﨑監督がこう語るように、坂口以外で選手権を通じて試合に出場したのは、U-16日本代表の経歴を持つ阿部と大橋滉平のみ。しかも、坂口は春先から怪我が続き、試合にも絡めていない現状だ。確かにチーム全体の経験値は低く、春先のフェスティバルではなかなか主導権を握った戦いができず、大敗を喫することもあった。
 
　しかし、プリンスリーグが開幕すると富山一戦まで７勝１分けと首位を快走。FW窪田、MF川渕陸、GK高橋謙太郎ら２年生が成長し、阿部、大倉、大橋という今年の軸となる２列目との連係の向上が、快進撃の要因となった。
 
「戦いながら成長していくしかない。選手権王者のプレッシャーはあるけど、ピッチに立っていない選手が多いからこそ、チャレンジャー精神を持ってやれると思う」（木原コーチ）
 
　星稜と富山一。北信越を牽引する両雄は、それぞれに手応えを掴みながら、前進している。次回の直接対決は９月19日の第17節。その時までに、互いがどれだけ成長し、どんな戦いを見せてくれるのか。再戦が楽しみだ。
 
取材・文：安藤隆人