ゴールができなかった場合、FWは許されない。
敵が総力を上げて守り抜こうとする場所に切り込み、目的を達成するためには、勇猛さが不可欠になる。それは蛮勇であってはならず、平常心から発する、確信的行為でなければならない。
スペイン語でInstinto Goleador(ゴールゲッターの本能)と言われる特質があるが、それは無慈悲に引き金を引ける冷淡さを意味するInstinto Asesiono(殺し屋の本能)に語源がある。
自らの覇気で高い技術を発せられるか、それがFWの条件なのだろう。
当然だが、そんな人間はどこにでもいるものではない。だからこそ、彼らには高い値がつく。昨年、米経済誌『フォーブス』が発表した年収ランキングトップ10では、10人中9人がFWだった(唯一の例外は8位タイに入ったトゥーレ・ヤヤ。ただ彼も2013-14シーズンはリーグ得点ランキング3位の決定力が評価されるMF)。
例えばクリスティアーノ・ロナウドの年収が8000万ドル。日本円で100億円近いわけだが、世界最高の得点能力への対価とも言える。もっとも、契約スポンサー収入だけで2800万ドル(約33億6000万円)と、彼の場合は実力同様にイメージが高価なわけだが、チームの基本年俸だけでも1800万ユーロ(約23億4000万円)と破格である。(編集部・注/1ドル=120円、1ユーロ=130円で計算)
同じレアル・マドリー所属で、CBとして守りの柱であるセルヒオ・ラモスは400万ユーロ(約5億2000万円)だけに、やはりポジション格差は激しい。
どこのクラブも、優秀なゴールゲッターにはできるだけ金を支払おうとする。相応の価値を認めているからだろう。それ故、ゴールができなかった場合、FWは許されない。少々チームプレーで貢献していたとしても、容赦なく“ポンコツ扱い”をされる。FWというのは、そういう定めを背負っているのだ。
「日本には釜本邦茂以来、点取り屋が不足している」
そう嘆かれるようになって久しい。個人よりも集団で責任を取ろうとする社会システムにおいて、どうしても理性にブレーキがかかる。勤勉さを求められてしまうと、刀は鞘に収まるか、錆び付いてしまう。スアレス、ズラタン・イブラヒモビッチ、ウェイン・ルーニー、ジエゴ・コスタ、カルロス・テベスなど、世界トップスコアラーというのは往々にして奇人である。
では、日本にストライカーは生まれないのだろうか?
冒頭に記したように日本代表FW、岡崎を忘れてはならない。彼はゴールを狩るために必要な技術を洗練させており、得点する経験を重ねることで、今の境地に辿り着いている。まさに、妖しい光を放つ抜き身の刀である。
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
スペイン語でInstinto Goleador(ゴールゲッターの本能)と言われる特質があるが、それは無慈悲に引き金を引ける冷淡さを意味するInstinto Asesiono(殺し屋の本能)に語源がある。
自らの覇気で高い技術を発せられるか、それがFWの条件なのだろう。
当然だが、そんな人間はどこにでもいるものではない。だからこそ、彼らには高い値がつく。昨年、米経済誌『フォーブス』が発表した年収ランキングトップ10では、10人中9人がFWだった(唯一の例外は8位タイに入ったトゥーレ・ヤヤ。ただ彼も2013-14シーズンはリーグ得点ランキング3位の決定力が評価されるMF)。
例えばクリスティアーノ・ロナウドの年収が8000万ドル。日本円で100億円近いわけだが、世界最高の得点能力への対価とも言える。もっとも、契約スポンサー収入だけで2800万ドル(約33億6000万円)と、彼の場合は実力同様にイメージが高価なわけだが、チームの基本年俸だけでも1800万ユーロ(約23億4000万円)と破格である。(編集部・注/1ドル=120円、1ユーロ=130円で計算)
同じレアル・マドリー所属で、CBとして守りの柱であるセルヒオ・ラモスは400万ユーロ(約5億2000万円)だけに、やはりポジション格差は激しい。
どこのクラブも、優秀なゴールゲッターにはできるだけ金を支払おうとする。相応の価値を認めているからだろう。それ故、ゴールができなかった場合、FWは許されない。少々チームプレーで貢献していたとしても、容赦なく“ポンコツ扱い”をされる。FWというのは、そういう定めを背負っているのだ。
「日本には釜本邦茂以来、点取り屋が不足している」
そう嘆かれるようになって久しい。個人よりも集団で責任を取ろうとする社会システムにおいて、どうしても理性にブレーキがかかる。勤勉さを求められてしまうと、刀は鞘に収まるか、錆び付いてしまう。スアレス、ズラタン・イブラヒモビッチ、ウェイン・ルーニー、ジエゴ・コスタ、カルロス・テベスなど、世界トップスコアラーというのは往々にして奇人である。
では、日本にストライカーは生まれないのだろうか?
冒頭に記したように日本代表FW、岡崎を忘れてはならない。彼はゴールを狩るために必要な技術を洗練させており、得点する経験を重ねることで、今の境地に辿り着いている。まさに、妖しい光を放つ抜き身の刀である。
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。