選手たちと話していて感じたのは、なぜこのような状態に陥ってしまったのか、彼ら自身も根本的な原因を把握できていないということだった。
 
　ある者は「怪我人の多さ」を挙げ（これは正しいだろう）、ある者は「多くの選手が入れ替わったからだ」と言い（これも正しい）、そしてある者は「補強に金を使わないからだ」と“本音”を漏らした（これは決して公式の場では聞くことができない）。
 
　しかし最も多くの選手が挙げたのは、チームのメンタリティーのあり方だ。今や選手のなかには、ミランの今シーズンは失敗、もはや何をしても意味がない、という思いがあり、それが無意識のうちにプレーに表われてしまっているのだ。この点については、インザーギ監督の手腕のなさが浮き彫りとなっている。
 
　インザーギ監督といえば、今ではその去就だけが注目されており、シーズン終了とともにチームを去り、夏には別の人間がベンチに座っていることは確実である。そしてそのことが、またチームからやる気を奪っているのだ。
 
　ロッカールームから漏れ聞こえてくるこうした声は、ほとんどが“囁き”だが、なかにははっきりと自分の考えを述べる選手もいる。例えばナイジェル・デヨング。チームのリーダー格のひとりである彼は、このように語っている。
 
「シーズン末に俺の契約は切れるが、まだ先のことは決めていないし、いつ決めるかも分からない。まず何より、ミランがかつての栄光を取り戻すために、どんな計画を持っているのかを知りたいね」
 
　彼の率直な物言いのなかに、真理が存在する。これこそが、ミランが抱える大きな問題のひとつなのである。
 
　多くの選手たちは、ミランがもうこの先、セリエAのトップクラスに（本当は欧州の、と言いたいところだが、現時点ではそれは夢にしかすぎない。他国のビッグチームとの差は余りにも大きい……）戻れないのではないかと懸念しており、チャンスがあれば他クラブへ移籍したいとさえ考えている。
 
　にもかかわらず、チーム幹部の動きは選手たちを安心させるどころか、よりいっそうの不安を煽っている。シルビオ・ベルルスコーニ・オーナーはクラブの株の一部を売りたがっているが、その買い手が誰になるかもまだ分からない。
 
　そしてこの名物オーナーは、選手がメンタル的に不安定な状態であるというのに、まだ欧州カップを狙えと現場を追い立てる。彼をはじめとするフロント陣がやっていることは全て、チームにとっては重荷にしかならないことばかりである。
 
　チームを本当に立て直したいのなら、まずはクラブとして現実的な目標を設定することから始めなければならない。
 
文：マルコ・パソット（ガゼッタ・デッロ・スポルト）
協力・翻訳：利根川晶子
 
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年２月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から８年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。