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“北”から軽視され続けた都市ナポリを再興に導いたマラドーナ。英雄を失った街はいま――【現地ルポ】

カテゴリ:ワールド

アレックス・チスミッチ

2020年12月10日

「ディエゴはよく手首に包帯を巻いていた。何千というサインを書いていたんだ」

それまでリーグタイトルのなかったナポリにニ度のスクデットをもたらしたマラドーナ。文字通りの英雄となった。(C) Getty Images

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 マラドーナは、社会的にも政治的にも軽視され利用されるばかりだったナポリという都市に、復活と再興への道を示す先導者だった。この都市の魂である放埒さや無秩序も、当たり前のように受け容れた。つまるところそれは彼自身の魂でもあったからだ。マラドーナを崇拝する女性ピッツァ職人テレーザ・イオリオは言う。

「ディエゴは私たちに喜びをもたらし、ナポリはこの国で重要な存在なんだと思わせてくれた。私たちはディエゴという人間を愛しているの。間違いも犯したかもしれないけれど、人間なんだからそれが当たり前。誰だって弱さは持っているし、そこに陥ることはある。それを責める必要はないわ」

 そう言うのは、マラドーナの死を伝える報道の中に、その偉大さよりもむしろ犯した過ちに焦点を当てて取り上げたものも散見されるからだ。しかし人間マラドーナは、誰にでも機嫌よく接する魅力的な人物でもあった。かつてのチームメイト、アレッサンドロ・レニカは「ディエゴはよく手首に包帯を巻いていた。頼まれると断れなくて何千というサインを書いていたんだ」と明かす。
 
 いまヨーロッパ、そして世界を襲っているコロナウイルスによるパンデミックが、人々の生活に大きな影響を及ぼしているのは、ナポリでも同じだ。政府は外出や移動の制限を含む厳しい制約を市民に課しているが、それもマラドーナの死を悼み何かを捧げたいというナポレターニの気持ちにブレーキをかけることはできない。

 死が報じられたその日の夜から、人々はマラドーナゆかりの地に続々と集まって様々な供物を捧げている。英雄は1991年4月1日にナポリを去った。しかしナポレターニの心の中には変わらず存在し続けており、その存在はこの都市のあらゆる街角で感じ取ることができる。ピッツェリアの入口、商店のショーウィンドウ、住宅街のバルコニー、建物の壁面……。そこかしこにディエゴの姿がある。

 マラドーナへのオマージュが最も大きな形をなしたのは、やはりスタディオ・サン・パオロだった。人々はTシャツ、マフラーから、写真、花、雑誌の切り抜き、自ら書いた詩まで、自分とマラドーナを結びつける思い出の品を持ち寄り、彼に捧げた。そうした品々を黙って見つめる人もいれば、ひざまずいてディエゴへの祈りを捧げる人、ただ泣き崩れる人もいる。
 
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