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「魂は止められない」“消えていた”マルセイユのアルゼンチン人FWが、マラドーナに捧げた9か月ぶりのゴール【現地発】

カテゴリ:ワールド

結城麻里

2020年12月02日

年の離れた友人だったディエゴとベネデット

ベネデットはパイエが譲ってくれたPKをきっちり決めてみせた。 (C)Getty Images

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 実はマラドーナとベネデットは、生まれ故郷もさほど遠くなく、年齢差にもかかわらず友情を結んでいた。もちろんベネデットにすれば、マラドーナは「生き神様」のような存在。またマラドーナにしてみれば、ベネデットなど「孫」のようなものだっただろう。だが貧民窟で生まれたディエゴは、どこまでも人間臭かった。

 だからベネデットは、そんなマラドーナが60歳の誕生日を迎えたとき、心をこめて還暦のプレゼントを贈った。「アートデザインストーリー」というフランス企業が発明した「自分の人生の素晴らしい映像を蘇らせて観られる」というコンセプトをもとに、現在の映像やセルフィービデオもリアルタイムで送受信できるタブロイドを特注で作らせ、プレゼントしたのだった。それなのにディエゴは、それを十分楽しむ間もなく、逝ってしまった。

 マルセイユは28日、ヴェロドロームにナントを迎えた(3-1)。歴史的なほどだらしないCLに怒りまくったサポーターたちが、トレーニング場の出口で選手たちのバスを「襲って」停め、何人かの選手がサポーターと話し合うしかなくなった。

 だが、これを何とか収拾してスタジアムに到着した選手たちは、「奮起しなければ!」と思うようになっていた。「CLでどんなにバカをやらかしたか、本当に自覚させられた」(ブバカール・カマラ)のだった。「今度こそ攻撃だ!攻撃するのだ!」
 
 前線には、久々にディミトリー・パイエ、フロリアン・トバン、ベネデットの3人が揃い踏み。トップ下でミカエル・キュイザンスが組み立てるという布陣が組んだ。そして2分にはまずトバンが、次いで35分にはパイエがゴールした。

 やがて60分――。相手チームのハンドでPKシーンが訪れた。キッカーは本来ならパイエだが、ベネデットにボールを渡した。ベネデットは思わずベンチを見て、監督に「蹴ってもいい?」の合図を送る。ヴィラス・ボアス監督は「蹴っていい」のサインを返した。パイエはベネデットの頬にキスして励ました。

 ベネデットの右足が降り抜かれた。名GKアルバン・ラフォンの長い腕も、ベネデットの「魂」をストップすることはできなかった。

 CL敗退は決まってしまったが、リーグ・アンでのマルセイユは11月30日現在、コロナ禍による延期で他より2試合少ないにもかかわらず6位につけている。宿敵パリ・サンジェルマン(首位)との勝点差はわずか4ポイント、2~5位(タイ)との勝点差はたった1ポイントだ。

 ディエゴに捧げた9か月ぶりのこのゴールで、ベネデットとマルセイユは再スタートできるだろうか。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI
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