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「魂は止められない」“消えていた”マルセイユのアルゼンチン人FWが、マラドーナに捧げた9か月ぶりのゴール【現地発】

カテゴリ:ワールド

結城麻里

2020年12月02日

今シーズンはノーゴールだったマルセイユの9番

PKを決め、スタンドに掲げられたマラドーナの垂れ幕を指差したベネデット。(C)Getty Images

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 そのとき彼は、チームメイトたちにもみくちゃに抱きしめられてから、テレビカメラに向かって突進した。そして背後の、誰もいないスタンドを指さした。そこには巨大なディエゴ・マラドーナの肖像画が飾られていた。

 オランピック・ド・マルセイユのアルゼンチン人ストライカー、ダリオ・ベネデットが、9か月ぶりにゴールを決めた瞬間である。

 彼が最後にゴールしたのは2月28日。コロナ禍でリーグ・アンが中断する前、つまり昨シーズンのことだ。今シーズンがスタートしてからは0ゴール。そんなベネデットがきっかり9か月後の11月28日、ついにネットを揺らしたのだった。

 人々はこの間、ベネデットを「第2のコスタス・ミトログル」と揶揄してきた。前監督リュディ・ガルシアが呼び寄せたミトログルは、到来時からケガを抱えていたうえ、なかなか点を決められず、どんどん自信を喪失。やがてゴール前で目も当てられない失敗を繰り返し、ピッチ上から消えていった。

 これに対して、アンドレ・ヴィラス=ボアス監督が呼び寄せたベネデットは、いきなりゴールを連発、マリオ・バロテッリにあやかって「スーパー・ダリオか?」とワクワクさせた。ところがその後、何かが噛み合わなくなった。撃っても、撃っても、決められない。そして自信喪失と長い沈黙が訪れた。ピッチ上にいるのかどうかもわからないほどひどい試合もあった。
 
 元フランス代表FWのジブリル・シセによれば、「こういうときのストライカーは本当に苦しいもの。自信がどんどんなくなって、何をやってもうまくいかなくなるんだよ。本当にキツイ」と同情を隠さなかった。

「では状況を打開するために監督や周囲はどうすればいいのか」と問われると、シセは「そりゃあ、『大丈夫。きっと決められる。きっとあるところできっかけがくる』って言うしかないわけだよ」と苦笑した。

 ベネデットのきっかけが何だったのかは、本人しか知らない。ただ、マルセイユがチャンピオンズ・リーグ(CL)13連敗という情けない記録を樹立した11月25日のポルト戦(0-2)で、途中投入されたベネデットは必死に動き回った。ゴールにはつながらなかったが、久しぶりに強くポストも叩いた。それは、ディエゴが死んだ日だった。
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