“流れの中から初得点”より注目されたメッシの「スルー」。批判を浴びる現状を象徴するシーンだった【現地発】

カテゴリ:連載・コラム

エル・パイス紙

2020年11月15日

もはやメッシは周囲の雑音を超越したところにいる

 この試合、メッシはベンチスタートだった。そのエースが戦況を見守る中、グリエーズマンが牽引車となり、マルク=アンドレ・テア・シュテーゲンとフレンキー・デヨングがサポート役となって織りなすパフォーマンスは決して悪い出来ではなかった。

 それはメッシ不在の新たなバルサの誕生の息吹を感じさせるものでもあったが、しかし押し気味に試合を進めても肝心のゴールが入らず、試合は1-1のタイスコアでハーフタイムに突入。ロナルド・クーマン監督は後半頭からメッシを投入し、そして10番はいつも通りにエースの働きを見せチームを勝利(5-2)に導いた。

 しかもそのあまりにも鮮やかなスルーを目にして、われわれは一つの疑念を抱く結果になった。今度、メッシが同じような場面に遭遇したときにシュートを選択するのか、そのままスルーするのか――。それは将来の選択についてもいえることだ。去就問題の行方に注目が集まっているが、コロナ禍でファンがカンプ・ノウでアクションを起こせない中、意表を突く決断を下すかもしれない。

 もはやメッシはメッシでいるためにゴールを決める必要はない。レギュラーで出場する必要もないし、守備に奔走する必要もない。ましてや影響力を行使して試合に出場しているなんて公言する必要もない。そもそもベティス戦のベンチスタートにしても、コンディション不良だったのか、どこか怪我をしていたのか、クーマンと話し合ったうえでの温存策なのかわれわれの与り知るところではない。

 試合中に休んだり、歩いたり、全力でプレスしないことに対する批判の声が高まっていることは確かだが、もはやメッシはそんな周囲の雑音を超越したところにいるのだ。そんな中で、シュートすることなくネットを揺らしたベティス戦での“無ゴール”はその神秘性をさらに加速させることになりそうだ。

文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙バルセロナ番)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラムを翻訳配信しています。

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