パナマ戦でもドイツで主力としてプレーしている自信が溢れていた
結果的に、遠藤は攻守を建て直し、チームの勝利に貢献した。アタッカーでも、FWでもない選手がチームの流れを変えられるのは、本当に力のある証拠だ。遠藤のプレーを見ていて改めて思ったのは、本当に無駄がないということだった。円熟味を増したベテラン選手のようにドシリと落ち着いていて、全方位に目があるように的確に動き、シンプルに素早くさばく。守備での当たりの強さ、1対1の強さは、湘南時代に監督だった曹貴裁に右のセンターバックに置かれることで磨かれたが、それがシュツットガルトでさらに磨かれているようだ。
ブンデスリーガ7試合を終え、1対1でボールを奪い合うデュエル勝利数は、リーグトップの116回をマーク。これは、これまで遠藤が努力を続けてきた成果であり、チームのレギュラーとして信頼され、起用されている理由も分かる。久保が「球際に強く、ボールを奪ってから素早く前に出してくれた。ドイツでコンスタントに試合に出ているので、余裕があるなと思っていました」と遠藤の凄さを語っていたが、パナマ戦でもドイツで主力としてプレーしている自信が溢れていた。
そんな遠藤を見ていると、ザックジャパンで主軸としてプレーした遠藤保仁を思い出した。遠藤保は、ブラジル・ワールドカップの7か月前ぐらいからスタメンを外れ、途中出場が増えた。出番は攻撃にシフトする際で、自らのパスで状況を打開し、前線の本田圭佑や香川真司、岡崎慎司らと連係しながら攻撃を活性化する役割を担っていた。2013年11月、欧州遠征でのオランダ戦などで見せたその変化の付け方は、さすが遠藤と唸らせるものだった。
遠藤航は、攻撃面は遠藤保にまだ及ばないが、守備の強さと全体を整えるリーダーシップを持っている。パナマ戦で見せたように途中出場で守備からリズムを生み、縦パスや左右に振るパスで攻撃を立て直す術は、彼にしかできないことだろう。
次のメキシコ戦は、個々の選手の質が高く、チーム戦術にも長け、相当にやっかいな相手である。そういう相手との試合にスタメンで出場し、自分たちの流れが悪いなか、自らが軸になってどうやってその流れを掴み、あるいは悪い流れを変えていくのか。ボランチながらも途中出場で「ゲームチェンジャー」になれるのはパナマ戦で証明してくれた。
次はスタメンでより難しいミッションをこなして、自分の良さと違いを見せてほしい。
取材・文●佐藤 俊(スポーツライター)