試合機会を創出した大会運営者の心意気に感謝!
決勝は、いつも地元でトレーニングマッチを重ねているチーム同士の対戦とあって、互いに手の内を知り尽くしていた。まずは失点のリスクを避け、相手陣内でプレーすることを最優先に考えた戦略を互いにとってきた。20分ハーフで行なわれたこの試合は、前半15分まで淡々と進んでいった。
勝負のポイントは「ミス」だと感じるほど膠着状態が続く。
両チームとも、ここまで2日で4試合をこなしている。特にガナーズは疲労の度合いが目に見えるほど高かった。それは準決勝にすべてをかけた証でもあるが、少しずつキックにズレを生じ始めていた。
一方のレイソルトーアはガナーズの体力の低下を待っていたかのように、前半15分過ぎから丁寧なビルドアップを盛り込んでいた。一見、積極的な守備から時折ショートカウンターを仕掛けるガナーズが優位なように見える試合も、こういう過密日程の中で開催される大会には、信じられないような落とし穴がある。
長年の取材でそんなシーンを何度となく目にしてきた記憶はあるが、それを乗り越えたチームが大会中に化ける姿も幾度となく見てきたので、どちらのチームにも期待感を持ち続けていた。
ハーフタイム後、ピッチに出てきた選手たちは残り20分で勝ち切る。そういう表情をしていた。互いに硬さはなく、むしろ自分たちの特徴を出そうとガナーズはサイドを生かし、レイソルトーアはターゲットからの折り返しを展開するような攻撃的な姿勢を打ち出していた。
そして、後半7分に試合が動いた。それは誰もが予想しないミスだった。ガナーズのゴールキーパーが自分に向かって飛んできたロングボールを見誤り、そのままゴールに吸い込まれる思いもよらない失点だった。
しかし、サッカーはミスの上に成り立つスポーツ。これまで5年生として6年生を後ろから支えてきた守護神のたった一度のミスをあれこれ言う選手は、一人もいなかった。後半13分にも2失点目を喫したが、1失点目以降に披露したガナーズの攻撃は目を見張るものがあった。
ボールを持ったら積極的に前に進み、スペースに味方が飛び込む。ボールを奪われても即プレッシャーをかけ、奪われた選手がプレスバックする全員サッカーは、自分たちのホーム会場で見守る後輩、そしてお母さんお父さんの心に深く刻まれたに違いない。
結果はレイソルトーアが2-0で優勝し、本大会への切符を手にした。
一つ伝えておくべきことがある。
それはこの大会の意義だ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、サッカー界だけでなく、スポーツ界、さらに社会全体が大きな被害にあっている。その有事の中で開催されている「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」は、公式戦の機会を創出する意味で大変に勇気のある決断だ。
一人の書き手として取材許可を出してくれた運営サイドと会場サイドに感謝を、そして、この大会を伝える場を作ってくれた媒体にもお礼を申し上げたい。そういった背景があったことを一筆だけ書き記しておく。
東日本予選を制した「柏レイソルA.A.TOR’82」には、ぜひ街クラブの代表として本大会で暴れてもらいたいと願っている。
取材・文●木之下潤(フリーライター)
勝負のポイントは「ミス」だと感じるほど膠着状態が続く。
両チームとも、ここまで2日で4試合をこなしている。特にガナーズは疲労の度合いが目に見えるほど高かった。それは準決勝にすべてをかけた証でもあるが、少しずつキックにズレを生じ始めていた。
一方のレイソルトーアはガナーズの体力の低下を待っていたかのように、前半15分過ぎから丁寧なビルドアップを盛り込んでいた。一見、積極的な守備から時折ショートカウンターを仕掛けるガナーズが優位なように見える試合も、こういう過密日程の中で開催される大会には、信じられないような落とし穴がある。
長年の取材でそんなシーンを何度となく目にしてきた記憶はあるが、それを乗り越えたチームが大会中に化ける姿も幾度となく見てきたので、どちらのチームにも期待感を持ち続けていた。
ハーフタイム後、ピッチに出てきた選手たちは残り20分で勝ち切る。そういう表情をしていた。互いに硬さはなく、むしろ自分たちの特徴を出そうとガナーズはサイドを生かし、レイソルトーアはターゲットからの折り返しを展開するような攻撃的な姿勢を打ち出していた。
そして、後半7分に試合が動いた。それは誰もが予想しないミスだった。ガナーズのゴールキーパーが自分に向かって飛んできたロングボールを見誤り、そのままゴールに吸い込まれる思いもよらない失点だった。
しかし、サッカーはミスの上に成り立つスポーツ。これまで5年生として6年生を後ろから支えてきた守護神のたった一度のミスをあれこれ言う選手は、一人もいなかった。後半13分にも2失点目を喫したが、1失点目以降に披露したガナーズの攻撃は目を見張るものがあった。
ボールを持ったら積極的に前に進み、スペースに味方が飛び込む。ボールを奪われても即プレッシャーをかけ、奪われた選手がプレスバックする全員サッカーは、自分たちのホーム会場で見守る後輩、そしてお母さんお父さんの心に深く刻まれたに違いない。
結果はレイソルトーアが2-0で優勝し、本大会への切符を手にした。
一つ伝えておくべきことがある。
それはこの大会の意義だ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、サッカー界だけでなく、スポーツ界、さらに社会全体が大きな被害にあっている。その有事の中で開催されている「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」は、公式戦の機会を創出する意味で大変に勇気のある決断だ。
一人の書き手として取材許可を出してくれた運営サイドと会場サイドに感謝を、そして、この大会を伝える場を作ってくれた媒体にもお礼を申し上げたい。そういった背景があったことを一筆だけ書き記しておく。
東日本予選を制した「柏レイソルA.A.TOR’82」には、ぜひ街クラブの代表として本大会で暴れてもらいたいと願っている。
取材・文●木之下潤(フリーライター)