“オルンガ封じ”でJ最高の出来。広島の荒木隼人が披露した極上の対人守備

カテゴリ:Jリーグ

志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

2020年09月20日

手放しで称賛はできない。失点シーンでは…

指示を送る様子の荒木。今季はこのような姿が見え始めた。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 褒めちぎりたいところだが、残念ながら1失点しているDFを手放しで称賛はできない。

 柏戦の失点シーンは、オルンガに縦パスが入り、荒木が対応。ポストプレーをされて江坂任にボールが渡ると、その隙に北爪健吾に最終ラインの裏を突かれてスルーパスが供給され、そのままネットを揺らされてしまった。

 確かに荒木はオルンガに起点を作らせてしまったが、前述したとおり潰しに行けば交わされるリスクがあるので、対人守備の対応の仕方になんら問題はなかった。そもそも、育ちが違うアフリカ人FWにフィジカル勝負を挑めば自滅するのは明白なので、荒木がポストプレーをさせてしまったことは論点にするべきではないだろう。

 課題を挙げるなら指示だ。失点シーンでは、佐々木翔が呉屋大翔と北爪を見る数的不利の状況に陥っていた。その瞬間、呉屋は荒木の近くに流れてきたので、佐々木に「呉屋は俺が見るから北爪に行け!」というような指示をしていれば、もしかしたら防げた可能性は高まっていたのかもしれない。マークの受け渡しは極めて重要で、その対応を誤ると、特にパスサッカーを志向する相手には簡単に崩されてしまう。
 課題克服の期待はできる。なぜなら荒木は吸収力の高い選手だからだ。オルンガを封じた対人守備の仕方も、昨季に磐田のルキアンや札幌のジェイと対峙した際のミスから学び、「これまでの経験から」会得したものである。毎試合、自己分析し、周囲のアドバイスに耳を傾け、練習して、再びチャレンジ。真摯にその繰り返しをしてきたから、成長スピードが早い。

 指示についても、成長の跡はある。

「入団当初は城福監督に『もっと喋れ!』と言われていました。ちょっと減ってきましたけど、『もっと出せる』と監督に言われています」(昨年9月のインタビューにて)

 昨季に比べると、今季は徐々に上記写真のような指示する姿を見れるようになってきた。課題克服のために意識していることは窺えるが、柏戦の失点シーンのように、指示にも緻密さを求めるならば、まだパーフェクトではない。

 あえて繰り返すがオルンガを封じた荒木の対人守備は本当に素晴らしかった。ただ、むしろ着目すべきは当の本人が柏戦をどう振り返り、次節につなげるのか――。伸びしろ十分の若手DFを評価し、手放しで称賛する記事を書くのは、期待も込めて次節以降にとっておこうと思う。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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