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【WSD編集長コラム】バロンドール候補のノミネート歴が一度もない!? 超ワールドクラスの痛快なラストダンスに期待

カテゴリ:ワールド

加藤紀幸(ワールドサッカーダイジェスト)

2020年07月04日

芸術的だったダービーでのボレーアシスト。

今シーズン終了後のシティ退団が決定しているシルバ。CLでチームをクラブ史上初の欧州制覇に導けるか。 (C)Getty Images
 (C)Getty Images

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 絶妙なタイミングで送り出すスルーパス、戦況を的確に読む卓越したプレービジョン、味方とフリースペースを瞬時に見つけ出す視野の広さ、時間とエリアが限られた局面でもコントロールを失わないキープ力やマーカーを外すターンなど、その特長を挙げていけば切りがないが、何より評価できるのは、そしてプレミアで成功できたのは、一流のクリエーターでありながら、シルバが守備の局面でも手を抜かず、ときには身体を投げ打って敵の侵攻を食い止めるハードワーカーであり、ハートの強い戦士でもあったからだ。

 シルバはチーム内で、もっとも“ユニホームに土がつく選手”のひとりだった。

 シティに在籍した10年間で公式戦428試合に出場し、75ゴール・137アシストを7月3日時点でマークしているシルバ。数あるアシストのなかでもお気に入りは、2011年10月23日に行なわれた宿敵マンチェスター・ユナイテッドとのダービーマッチで披露したラストパスだ。

 5-1で迎えた後半アディショナルタイム。自陣右寄り、ハーフウェーラインから15mほどの位置だった。前方から飛んできたボールを左足トラップで軽く浮かせると、走り出したFWエディンゼ・ゼコの動きに合わせ、左足のボレーでリオ・ファーディナンドとクリス・スモーリングの間に約50メートルの距離のロングスルーパスを通し、シティの6点目をお膳立てしたプレーは、まさに芸術的だった。
 これほど偉大なMFが、バロンドール候補として一度もノミネートされなかった事実に、だからこそ衝撃を受けたのだ。シティの44年ぶりのリーグ優勝を支え、スペイン代表のEURO2012制覇に大きく貢献した2012年度のバロンドール候補にすら、彼の名前はなかったのだ。もっと正当に評価されるべきタレントの一人だろう。

 すでに34歳。キャリアの晩年を迎えたシルバはこの夏、10年間過ごしたシティを去る。最後に見たいのは、8月7日に再開するチャンピオンズ・リーグで、シティをクラブ史上初の頂点へ導き、キャプテンとしてビッグイヤーを掲げる姿。バロンドール候補に一度もノミネートされなかったレジェンドの、痛快な“ラストダンス”に期待したい。

文●加藤紀幸(ワールドサッカーダイジェスト編集長) 
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