【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の四「集団を強固にするマネジメント」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年02月04日

欧州ではあまり例がない“合議制”という日本独特のマネジメント。

2010年の南アフリカ・ワールドカップでは、大会前の選手ミーティングが躍進の要因のひとつに取り沙汰された。こうした集団統率の形は欧州ではあまり見られないという。(C) SOCCER DIGEST

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 そのため、指導陣の結束こそが欠かせない。
 日本のJリーグで「謀反」が簡単に起こってしまうのは、「監督を誰にするか?」という議論は盛んでも、「監督とそのコーチ」という指導陣全体への査定はなく、監督の首だけすげ替えていることに問題があるだろう。
 
 監督は信頼できるコーチを見つけるべきだし、フロントも監督とコーチをセットで考えるべきだ。2013年に日本の某クラブで起こったようなクーデターは言語道断。チーム本体にも打撃を与えるものだった。
 
<コーチの裏切りは、決してあってはならない。それは寝首をかくようなもので、卑怯千万である>
 
 これは欧州フットボール界では鉄則である。監督に離反するだけでなく、その座をまんまと奪い取るような人間は信用されない。日本も、監督とコーチの関係において集団をマネジメントする形を模索していくべきだろう。
 
 だが面白いことに、日本には独自の集団統率の形がある。それは選手が現状に見切りを付けた時に起こる。選手たちが監督に代わって自主性を発揮して合議に及び、戦いに踏み切る。その時、思わぬ力を発揮する。
 
“合議制”というマネジメント、もしくは下から上を統べる“民主制”とでも言うべきか。例えば、南アフリカ・ワールドカップの日本代表、首位に立って監督交代したサガン鳥栖など、選手主導で集団が躍動している。これは欧州ではあまり例がないことで、注目に値する現象だろう。
 
<命令なくとも協調して動ける>
 現場において、これほどの強みはない。
 
文:小宮良之(スポーツライター)
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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