ところが、大会直前になって中島が負傷離脱。3人の同時起用が叶わなくなる。そこで左にロシア組の原口を据え、乾を久しぶりに招集してバックアップ体制を整えたが、親善試合5戦のような連動性が影を潜めてしまう。原口はダイナミックな走りやドリブル突破、ハードワークや献身性といった部分で貢献していたが、堂安・南野と一緒にプレーした時間が少なかったのが災いしたのか、香川や乾と並んで躍動したロシアの時ほどは輝けなかった。
若い2人もA代表初の大きな国際大会の重圧からか固さが感じられ、思うようにゴールという結果を残せなかった。堂安は初戦・トルクメニスタン戦(アブダビ)で得点して幸先いいスタートを切ったかと思われたが、その後は相手に左足でボールを持つ癖を読まれて壁にぶつかる形になった。準々決勝・ベトナム戦(ドバイ)のVARによるPKゴールはラッキーだったが、全体的に見ると不完全燃焼感の色濃く残るものだったに違いない。
中島の負傷離脱からロシアW杯組が招集されるもインパクトを与えるには至らず
南野の方は再三の決定機を次々と外し、堂安以上の苦しみを味わった。日頃、気さくに報道陣と会話する彼も無得点が続く間は終始無言で、平常心ではいられなかったのだろう。決勝・カタール戦(アブダビ)でようやく1点を取ったものの「あのゴールに意味はないですね。負けたんで。勝ちにつながるゴールやそのための貢献なら意味あるけど、自分としては悔しさしかない」と屈辱感に打ちひしがれていた。親善試合と公式戦の違いを若い2人は再認識したはずだ。
アジア準優勝という結果と内容を踏まえ、森保監督がここから9月の2022年カタール・ワールドカップ2次予選に向け、アタッカー陣をどう組み替えるか。そこは1つの大きな注目点だった。2019年3月シリーズには香川を新体制初招集。2戦目のボリビア戦(神戸)で乾、宇佐美とともに起用したが、期待通りの成果を得られなかった。
6月シリーズは2戦目のエルサルバドル戦(宮城)で3-4-2-1の布陣にトライ。ベルギー移籍で自信をつけた伊東純也(ゲンク)を右ワイド、原口を左ワイドに配置し、堂安と南野を2シャドーに並べるといったテストも行なったうえ、18歳になったばかりの久保建英(マジョルカ)も思い切って使ったが、「あくまで三銃士が軸」という指揮官の考えを変える存在は出てこなかった。結局、そのまま9月の予選を迎えることになったのである。