【ジーコが語るJリーグ|中編】「正直、歯止めをかけられない」。若手海外移籍への懸念

カテゴリ:Jリーグ

志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

2020年04月30日

若手の海外移籍に関しては「黄色信号を出します」

昨季、FC東京からレアル・マドリーへ移籍し、現在はレンタル先のマジョルカに所属する久保。近年は若手の海外移籍が加速している。(C)Getty Images

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 昨季、FC東京からレアル・マドリーへ移籍した久保、鹿島からバルセロナへ渡った安部の他には、菅原由勢が名古屋からAZ(オランダ)へ、中村敬斗がG大阪からトゥベンテ(オランダ)へ移籍した。いずれも20歳以下で海外に渡るなど、近年は特に若手の海外移籍が加速している。日本人の力が認められるようになったものの、若手の海外移籍に関しては、ジーコは「黄色信号を出します」と警鐘を鳴らす。

「若い選手は、まだできあがっていない状態。そんな状態で海外に行くと、ただサッカーをするだけではなくて、生活やその国の言語にも慣れないといけない。自国の日本であればサッカーだけに集中できるのに、海外に行けばなかなかそうはいかない。他のことも考えて生活をしないといけない影響で、サッカーの成長ができなくなる危険性もあります。

 スターというのは、クラブで台頭し、活躍をしてできるものなのに、ちゃんとした経験をせず、または結果を残していないまま海外に行って、『もう自分はできる』と過信をしてしまう可能性もある。結局は海外に行ったら、移籍先のトップチームで試合に出るのではなくて、下部チームで試合に出るとなると下のレベルなので、だんだんとモチベーションが分からなくなって、サッカー選手としての成長が停滞してしまうリスクもあります。

 若手の海外移籍は考えただけでもいろんな危険性があって、彼ら若手の成長の停滞で日本サッカーが原石を失ってしまうと、必然的に将来の日本サッカーに影響を及ぼすかもしれない。これは自国のサッカーが停滞してしまう、非常に危険な状況になると考えないといけないことです。

 選手は試合に出てこそ成長するもの。日本サッカーはクラブレベルではだいぶ認知されるようになったので、Jリーグのトップレベルで経験、ひいては実績を積めば、実力のある選手として移籍市場で認めてもらえる。一方で、まだ試合経験を積んでいない若手は、選手の実力を評価されるところまでは辿り着いていないと思います。それなのに、海外移籍をして、行き先で試合に出れなければ、選手も戸惑いを感じる。だから、『移籍したい!』と希望するのは簡単だけれども、タイミングや自分が成長できるところかどうかをしっかりと考えないといけないし、移籍に関わる人々はそこも考慮しないといけない。お金だけを重視したら、日本サッカーが停滞する時期がいずれ出てきてしまうかもしれません」

 若手の海外移籍について改善策を聞いたが、ジーコは「ない」と即答した。

「正直、それに歯止めをかけることはできない。日本でも、ブラジルでもそう。現状では、個人の意向を止めることはできない」

<後編に続く>

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
通訳●高井蘭童(鹿島アントラーズ)

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