35歳の誕生日にFAカップ決勝――それが最高のエンディング。
今シーズンのジェラードは、重要な試合でしばしばスタメンを外れることがあった。ブレンダン・ロジャース監督は開幕前から、「プレー時間を制限する」と話していた。ジェラードの名前は、もはや最初にチームシートに書き込まれるものではなくなっていたのだ。
だからといって、ロジャースとジェラードは折り合いが悪かったわけではない。実際、来シーズンはコーチ兼任でと、ロジャースはジェラードに打診をしていたという。
ジェラードは、純粋にピッチに立ち続けたかったのだ。だから、そうできる新天地を求めたのである。
「スカッドプレーヤーには決してなれない。90分間プレーするのが、最大の喜びだから」
ジェラードは私とのインタビューで、心情をそう吐露した。
移籍を決意したジェラードだが、選択肢としてありえなかったのは、リバプールと対戦する可能性がある欧州のクラブへの移籍だった。となれば、可能性は限られる。アメリカ行きは、いわば必然のチョイスだった。かつてデイビッド・ベッカムが着たロサンゼルス・ギャラクシーのユニホームを、ジェラードも着る。
「これまでとは違う経験をしたいと考えたスティーブンにとって、いい潮時だったようだ。彼はリバプールというクラブのアイコンであり、これからもずっとそうだ。いつかまた、アンフィールドに戻ってくるだろう」
ロジャースはそう言って別れを惜しむ。
リバプールのチームメイトがジェラード退団のニュースを知ったのは、翌日の新聞でだった。誰もが契約更新を確信していた。
ともにプレーして7年になるマルティン・シュクルテルは、驚きを隠せなかった。
「正直、ショックだ。とてもね。スティービーがここからいなくなるなんて、考えられない。文字通りのリーダーで、もちろん選手としても超一流だ。そのうえナイスガイ。彼がいなくなったら厳しいだろうね」
今シーズンのFAカップ決勝は5月30日。まさにその日は、ジェラードの35回目の誕生日だ。FAカップ決勝がリバプールでのラストゲームになれば、それは最高のエンディングだ。
シュクルテルは言う。
「トロフィーとともに、スティービーにはリバプールでのキャリアに幕を引いてほしい。そうなるように最善を尽くすだけだ」
あと、5か月。偉大なるキャプテンの雄姿を、目に焼き付けたい。
【記者】
James PEARCE|Liverpool Echo
ジェームズ・ピアース/リバプール・エコー
地元紙『リバプール・エコー』の看板記者。2000年代半ばからリバプールを担当し、クラブの裏の裏まで知り尽くす。辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。
【翻訳】
松澤浩三
だからといって、ロジャースとジェラードは折り合いが悪かったわけではない。実際、来シーズンはコーチ兼任でと、ロジャースはジェラードに打診をしていたという。
ジェラードは、純粋にピッチに立ち続けたかったのだ。だから、そうできる新天地を求めたのである。
「スカッドプレーヤーには決してなれない。90分間プレーするのが、最大の喜びだから」
ジェラードは私とのインタビューで、心情をそう吐露した。
移籍を決意したジェラードだが、選択肢としてありえなかったのは、リバプールと対戦する可能性がある欧州のクラブへの移籍だった。となれば、可能性は限られる。アメリカ行きは、いわば必然のチョイスだった。かつてデイビッド・ベッカムが着たロサンゼルス・ギャラクシーのユニホームを、ジェラードも着る。
「これまでとは違う経験をしたいと考えたスティーブンにとって、いい潮時だったようだ。彼はリバプールというクラブのアイコンであり、これからもずっとそうだ。いつかまた、アンフィールドに戻ってくるだろう」
ロジャースはそう言って別れを惜しむ。
リバプールのチームメイトがジェラード退団のニュースを知ったのは、翌日の新聞でだった。誰もが契約更新を確信していた。
ともにプレーして7年になるマルティン・シュクルテルは、驚きを隠せなかった。
「正直、ショックだ。とてもね。スティービーがここからいなくなるなんて、考えられない。文字通りのリーダーで、もちろん選手としても超一流だ。そのうえナイスガイ。彼がいなくなったら厳しいだろうね」
今シーズンのFAカップ決勝は5月30日。まさにその日は、ジェラードの35回目の誕生日だ。FAカップ決勝がリバプールでのラストゲームになれば、それは最高のエンディングだ。
シュクルテルは言う。
「トロフィーとともに、スティービーにはリバプールでのキャリアに幕を引いてほしい。そうなるように最善を尽くすだけだ」
あと、5か月。偉大なるキャプテンの雄姿を、目に焼き付けたい。
【記者】
James PEARCE|Liverpool Echo
ジェームズ・ピアース/リバプール・エコー
地元紙『リバプール・エコー』の看板記者。2000年代半ばからリバプールを担当し、クラブの裏の裏まで知り尽くす。辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。
【翻訳】
松澤浩三