ついに動き出したアンフィールド拡張計画の全容とは【リバプール番記者】

カテゴリ:メガクラブ

ジェームズ・ピアース

2014年12月24日

年間およそ2000万ポンドの増収見込み。

アンフィールドの拡張計画がついに始動。増収を約束するリノベーションだ。 (C) Getty Images

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 移転か、拡張か――。過去15年にわたって結論が出なかったスタジアム問題が、ようやく決着した。アンフィールド(リバプールの本拠地)拡張に向けたプロジェクトが、ついに動き始めたのだ。
 
 総工費1億1400万ポンド(約211億円)の拡張計画は、二段階に分かれている。老朽化したメインスタンドの改築が「第1ステージ」で、8500席が増設され、スタジアムのキャパシティーは現在の4万5000人強から5万4000人となる。
 
「第2ステージ」はアンフィールド・ロード・エンド(ゴール裏席で、地元サポーターが集うKOPスタンドの反対側)の拡張で、4800席を増設。最大収容人数は、これによって5万9000人弱にまで拡大する。完成予定は2016年夏で、チケット収入は年間で2000万ポンド(約37億円)の増収が見込まれる。
 
 なかでも収入増に大きく貢献するドル箱として期待されているのは、合わせて7000席が新たに用意されるビジネスクライアント用のホスピタリティーシートだ。
 
 リバプールにとってスタジアム問題は、いわば積年の課題だった。歴史と伝統、格式は群を抜くアンフィールドも、現代の基準からすればファーストクラスとは言えず、とくに5万人に満たないキャパシティーはビジネス的には大きな弱点だった。
 
 デイビッド・ムーアズ元オーナー会長が、「アンフィールドを離れて、(隣接する)スタンリー・パークに新スタジアムを建設する」と移転計画をぶち上げたのは、新世紀が始まったばかりのころだった。収容人数を増やして増収を図らなければ、経済力で国内外のライバルに太刀打ちできず、結果、競争力が保てなくなると、そう危惧したからだ。
 
 この移転計画が頓挫したのは、詰まるところ資金を調達できなかったからだ。ムーアズは結果的に2007年にクラブを売却することになり、スタジアム問題も次のオーナーへと持ち越された。ムーアズから経営権を取得したアメリカ人のジョージ・ジレットとトム・ヒックスは、スタジアム新設をいわば“公約”に掲げた。
「(クラブ買収から)60日以内にスタイリッシュでモダンなスタジアム建設に着手する」
 
 しかし、この構想も結局は空手形に終わった。しかも、プロジェクトのプランニングに6000万ポンド(約111億円)という巨額を無駄に費やしながらだ。一事が万事こんな具合で、失政を重ねたジレットとヒックスはクラブに損害を与えるだけ与えて去って行った。
 
 その意味でも、スタジアム問題に決着をつけた現オーナーグループ、フェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)の舵取りは称賛に値する。代表のジョン・W・ヘンリーと会長のトム・ウォーナーは、あらゆる角度から検討し、地元自治体の認可も取り付け、改修・拡張という結論を出したのである。
 
 住宅地の真ん中に建つアンフィールドに手を加える改修工事は、騒音対策など周辺住民への配慮が不可欠だ。こうした点もスタジアム問題を難しくしていた要因のひとつだったが、FSGは「アンフィールド地区」の地域活性プロジェクトという画を描き上げることによって、地元の賛同を得たのである。
 
 伝統と格式にモダンをまとったアンフィールドが、リバプール・フットボールクラブを新たな高みへと押し上げるはずだ。
 
【記者】
James PEARCE|Liverpool Echo
ジェームズ・ピアース/リバプール・エコー
地元紙『リバプール・エコー』の看板記者。2000年代半ばからリバプールを担当し、クラブの裏の裏まで知り尽くす。辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。
【翻訳】
松澤浩三
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