裾野が広がったJで、次に待たれるのは頂点を引き上げる牽引車。
天王山となったのは、G大阪がナビスコカップを獲得した後の32節、埼玉スタジアムでの首位浦和との直接対決だった。浦和のペトロヴィッチ監督は、今でもこの試合では主導権を握り、前半でレフェリーが浦和にPKを与えていれば勝てたと信じているようだ。だが浦和の方がボールを保持する時間が長かったとしても、効果的にチャンスへとつなげていたわけではなかった。中央を固めるG大阪は、サイドからのクロスを想定し、ことごとくはね返した。こうして終盤でのカウンターの機会を待ったのだ。
試合後、2-0で勝利したG大阪の長谷川監督は話した。
「決め手となったのは、交代した選手の働きだった。ウチは戦える18人を揃えたが、浦和は17人だったのではないか」
G大阪は後半途中で得点源の宇佐美貴史とパトリックを下げ、ともに代わって入ったリンスがお膳立てをして佐藤晃太が均衡を破る。さらに追加点を決めたのも交代出場の倉田秋。一方浦和は、万全な選手ではなく、故障が完治していない興梠慎三を強行出場させたが及ばなかった。振り返れば、レギュラー陣だけではなく、オプションも含めた戦力の層の厚さが、微妙に明暗を分けたと言えるかもしれない。
2位に終わったペトロヴィッチ監督は言った。
「リーグ戦でも、タイトルや残留がかかった試合は内容が違う。こういう試合では、レッドカードを3枚くらいもらってでも勝ち切らなければならない」
ビッグクラブが常勝する秘訣が「勝者のメンタリティ」であり「勝ち癖」だとすれば、伝統的に最も染みついているのは鹿島だろう。
さすがに今年は勝ち切れなかったが「この若いメンバーで戦っていく」(トニーニョ・セレゾ監督)と決め、大胆に世代交代を進めた。間違いのない選手を獲得し、実際に起用して確実に育てていく。鹿島だけは、そのノウハウを確立している。だから今年は優勝を逃したとしても、しっかりと将来への布石を打つことができた。
こうして鹿島は、明確な中長期のヴィジョンを持ち、ぶれずに常勝への道を歩んでいる。クラブ規模からして、毎年優勝を狙うわけにはいかないが、逆に低迷を最小限に食い止め伝統を繋げる方法を実践している。
やはり今後問われるのは、強化担当の資質だろう。もし浦和のように圧倒的な観客動員を誇る潜在能力の高いクラブが、鹿島と同等の方法論を手にすれば、本当にJを牽引する日が来るかもしれない。
本来戦国リーグはスリリングなものだ。ところが意外にファンは心躍らず、逆にリーダーなき混迷に鼻白んでしまっている傾向も見える。裾野が広がったJだが、次は頂点を引き上げる牽引車の登場が待たれるところだ。
取材・文:加部 究(スポーツライター)
試合後、2-0で勝利したG大阪の長谷川監督は話した。
「決め手となったのは、交代した選手の働きだった。ウチは戦える18人を揃えたが、浦和は17人だったのではないか」
G大阪は後半途中で得点源の宇佐美貴史とパトリックを下げ、ともに代わって入ったリンスがお膳立てをして佐藤晃太が均衡を破る。さらに追加点を決めたのも交代出場の倉田秋。一方浦和は、万全な選手ではなく、故障が完治していない興梠慎三を強行出場させたが及ばなかった。振り返れば、レギュラー陣だけではなく、オプションも含めた戦力の層の厚さが、微妙に明暗を分けたと言えるかもしれない。
2位に終わったペトロヴィッチ監督は言った。
「リーグ戦でも、タイトルや残留がかかった試合は内容が違う。こういう試合では、レッドカードを3枚くらいもらってでも勝ち切らなければならない」
ビッグクラブが常勝する秘訣が「勝者のメンタリティ」であり「勝ち癖」だとすれば、伝統的に最も染みついているのは鹿島だろう。
さすがに今年は勝ち切れなかったが「この若いメンバーで戦っていく」(トニーニョ・セレゾ監督)と決め、大胆に世代交代を進めた。間違いのない選手を獲得し、実際に起用して確実に育てていく。鹿島だけは、そのノウハウを確立している。だから今年は優勝を逃したとしても、しっかりと将来への布石を打つことができた。
こうして鹿島は、明確な中長期のヴィジョンを持ち、ぶれずに常勝への道を歩んでいる。クラブ規模からして、毎年優勝を狙うわけにはいかないが、逆に低迷を最小限に食い止め伝統を繋げる方法を実践している。
やはり今後問われるのは、強化担当の資質だろう。もし浦和のように圧倒的な観客動員を誇る潜在能力の高いクラブが、鹿島と同等の方法論を手にすれば、本当にJを牽引する日が来るかもしれない。
本来戦国リーグはスリリングなものだ。ところが意外にファンは心躍らず、逆にリーダーなき混迷に鼻白んでしまっている傾向も見える。裾野が広がったJだが、次は頂点を引き上げる牽引車の登場が待たれるところだ。
取材・文:加部 究(スポーツライター)