【山形】「悔しさ忘れぬうちにJ1へ」決勝点の山﨑が3年越しの誓いを実現

カテゴリ:Jリーグ

頼野亜唯子

2014年12月08日

快進撃のきっかけとなるシステム変更を機能させた献身的な守備。

攻守両面でJ1昇格に大きく貢献した山﨑。2011年に味わった悔しさを力に変えた。(C) SOCCER DIGEST

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 昇格を決めるゴールは、山﨑の渾身のヘッドだった。
 
 37分のコーナーキック。直接枠を捉えようかという宮阪のキックはGKに弾かれたものの、拾った宮阪がもう一度クロス。ポジションを取り直して待ち構えていた山﨑が頭で捉え、千葉GK高木の左手の先をすり抜けた。欲しかった先制点。山﨑は走りながら、激しく吠えた。3年前の悔しさを、自ら晴らして見せた。
 
 山﨑は、2011年のシーズン途中で広島から期限付き移籍。J1での3年目のシーズンを戦う山形が、残留のために白羽の矢を立てた助っ人だった。だが結果は、3節を残して降格が決定。「この悔しさを忘れないうちに、またJ1に帰らなければ」。その思いを胸に翌年完全移籍。主将としてチームを引っ張った。
 
 しかし、12、13年と昇格争いに絡めず、石﨑新監督を迎えてスタートした今季も、チームは10位前後が定位置。昇格争いの話題を賑わせているとは言い難かった。しかも何より、山﨑は出場機会を激減させていた。開幕戦こそスターティングメンバーに名を連ねたものの、短い時間の途中出場が続いた。
 
「もう、ベンチから試合を見るのはいやや」
 J1広島からJ2山形に完全移籍した理由を他のチームの親しい選手に尋ねられ、そう漏らしていたのを聞いたことがある。自らピッチに立ち、そして自らのプレーで山形をJ1に戻すことが、山﨑が胸に刻んだ使命だった。
 
 得点だけではない。今季、山形の快進撃のきっかけになったのは3-4-3へのシステム変更だが、これをうまく機能させるうえで鍵を握っていたのが、2シャドーの山﨑と川西の献身的な守備だった。今や山形の代名詞になったハイプレスのスイッチがここなのだ。
 
 さらに言えば、運動量を厭わない山﨑の走りは以前からの持ち味だが、試合後に石﨑監督が「元々高いテクニックを持つ選手が守備をすることを覚えた」と評価した川西の自己変革は、山﨑の背中を見て何かを感じ取ったからに他ならない。
 
 プレーオフ決勝を前に、山﨑はこう語った。
「山形をJ2に落としてしまった悔しさを持った選手たちがまだ残っている。チャン(石井)もタツ(石川)もそう。試合に出られない選手の中にもいる。そういうみんなの思いも背負って頑張りたい」
 
 この日も山﨑は74分に交代するまで全速力で走り続け、チームメートに後を託した。3度目のプレーオフを戦う千葉の必死の猛攻を耐え抜いて、松尾主審の笛が吹かれた時、山﨑の3年越しの誓いは見事に果たされた。
 
 12月4日に、33回目の誕生日を迎えた。プレーオフ決勝を控え、バースデーケーキはお預けだった。だが、ケーキで祝うのはまだ早い。1週間後には、古巣G大阪との天皇杯決勝戦が待っている。山﨑はまた、天皇杯男でもある。シーズンの集大成となる大仕事が待っている。
 
取材・文:頼野亜唯子(フリーライター)

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