ポジションはあってないようなもの、という枠組みに逆に囚われている気さえする
そうした攻守のちぐはぐさから生まれた綻びを突かれたのが、この日の2失点だった。ともに抜かれたのは左サイドバックとセンターバックの間のスペースで、先制点はエウシーニョの巧みなスルーパスに、決勝点は中村慶太のダイレクトパスに切り裂かれた。ギャップに入り込まれてはDF陣も後追いの守備しかできず、死角から飛び込んできたドウグラスと西澤健太のシュートの威力はいわば割増状態。名手ランゲラックは孤軍奮闘でその他に4度の決定機をセーブしてくれたが、それだけ当たっていたGKでも無理なほど、失点の場面の名古屋の守備は機能を失っていた。
それでも、と一矢を報いた前田直輝の言葉が真を打つ。
「ウチとやるチームはだいたいがリトリートしてくるし、そこで良い言い方をすれば押し込めていても、相手からしたら作戦通り。来させて、来させて、カウンター。それがうまくはまっているというのが、このところ勝てていない相手だと思う。そのブロックはやっぱり場所を使わないで外すことであったり、例えばひとりが爆発的なスピードで、というのも必要だったりする。それがないならドリブルで崩していく。いろんな武器を出さないと陣形として5枚、4枚と引かれた時に難しい。
それでも、と一矢を報いた前田直輝の言葉が真を打つ。
「ウチとやるチームはだいたいがリトリートしてくるし、そこで良い言い方をすれば押し込めていても、相手からしたら作戦通り。来させて、来させて、カウンター。それがうまくはまっているというのが、このところ勝てていない相手だと思う。そのブロックはやっぱり場所を使わないで外すことであったり、例えばひとりが爆発的なスピードで、というのも必要だったりする。それがないならドリブルで崩していく。いろんな武器を出さないと陣形として5枚、4枚と引かれた時に難しい。
自分たちのやりたいサッカーは速いテンポでボールを回してというものだけど、それを突き詰めて向上させるだけでなく、プラスアルファも必要だと思う。ボール回しが右ストレートなら、左フックも必要だなって。それは自分のドリブルでもいいし、マテウスのミドルシュートでもいい。いろんな選手が個性を持っているから、それはもっともっと出していいと思う」
前田の得点は丸山祐市のフィードにジョーが競り合い、こぼれ球を拾ってのドリブルシュートだった。フィードが得意な丸山、ペナルティエリア内に相手を押し込んでプレーできるジョー、そしてカットインシュートを持っている前田の個性ががっちり噛み合ったゴールである。清水の2得点もまた選手の個性が噛み合ったもので、それは狙っていたカウンターに限らない攻撃の形でもあった。適材適所の言葉はそうした部分から浮き上がってくるもので、ポジションはあってないようなもの、自由に攻撃参加してもいい、という枠組みに名古屋が逆に囚われているような気さえする。
上位争いが一転して7位にまでその立ち位置を後退させた名古屋だが、残る半分のリーグ戦でも自分たちらしく、力を発揮して内容のある勝利を目指すという基本姿勢は変わらないだろう。しかし、その表現技法には改善とバリエーションの増加が求められるはずだ。好調の彼らが手の付けられない強さを見せることを我々は知っているが、今はその半分も力を出せていない。出させてもらえない以前に、自分たちの良さを見失っている。名古屋はもう一度“自分たちの枠組み”を、定義しなおす必要があるのかもしれない。
取材・文●今井雄一朗(フリーライター)