新たな力の台頭を監督が吸い上げる体制ができている
一方、チームに居続けることで成長した選手がGKの富澤だ。富澤は14節の金沢戦で負傷した徳重に代わってJリーグ初出場を記録すると、的確な守備でクリーンシートに貢献。その後のルヴァン杯でもPKをストップするなど、試合を重ねる毎に周囲の信頼を深めている。加入して今季で4年、リーグ戦出場を経験していく同期や後輩をよそに、コツコツとトレーニングを積み重ねてきた努力が実った格好だ。ずっと指導してきた三好GKコーチも「もともと身体も大きいし、キックの質はGKで1番。反応やシュートへの準備も良くなってきた」とその実力に太鼓判を押すまでに成長している。
このように着実に新しい力が成長している状態について、手倉森誠監督は「一度外に出たことで、ふてぶてしくなったというか気持ちに変化が出ている」と、香川、畑、吉岡のミスを恐れない姿勢に目を細める。また富澤に対しても「リオ世代なんだよ。こんな選手がいるって教えてほしかったよ(笑)」と評価を隠そうとしない。監督のそういう姿勢が選手のチャレンジを呼ぶ雰囲気の一助とも言えるだろう。新たな力が台頭し、それを指揮官が積極的に後押しする。暑さが増し消耗戦へ突入するこれからの時期、このサイクルがしっかりと回り出せば、長崎はさらに上昇できるに違いない。
取材・文●藤原裕久(サッカーライター)