さらに、とりわけ成長を感じたのは、32分のプレー。背後から相手に寄せられてもまったく動じずに、ボールを再び懐に収め、何事もなかったかのように味方へとつなげたシーンだ。
Jリーグでプレーしていた時から、相手にぶつかられてもほとんど奪われることはなかったが、身体の線が細く、やはり多少はグラついていたものだ。それが、ベルギーに渡り、常日頃から屈強なDFと対峙しているからだろうか、余裕すら感じさせた。
試合後にそのプレーについて、伊東自身は「(成長は)あまり感じていなかったです。とりあえずボールを失わないようにということだけ考えていました」と語ったが、相手のタックルを無効化してしまう足腰の強さには、明らかな変化が見られた。
また、この日はサッカーキャリアで初めて任されたウイングバックにも意欲的に取り組んだ。「いろんなポジションができるのは強みになると思うので、与えられたポジションで頑張ろうと思います」という言葉には、プレーの幅を広げようという気概をうかがわせる。
初めてのウイングバックにも意欲的に取り組んだ
それだけではない。当然自慢のドリブルにもまだまだ磨きをかけるつもりだ。試合後には「仕掛ける場面では積極的にいこうと思ってましたけど、もう少しできたと思う。全部抜くくらいの気持ちでやりたい」と語気を強める。
26歳となり、もはや若手とは呼べなくなったが、伊東の成長はとどまることを知らない。ビッグクラブでプレーするという夢もあるし、コメントを聞けば聞くほど、飽くなき向上心が読み取れる。
まだまだ伸び盛りのスピードスターは今後、日本代表に欠かせない選手になるかもしれない。これから始まる予選を勝ち抜き、2022年のカタール・ワールドカップを前にした時に、再び伊東に訊いてみたい。
「カタール・ワールドカップ、選ばれる自信はあるか」と。
取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)