「無茶な練習だったけど…」破天荒な勝負師・タヴァレス監督が横浜FCに残したもの

カテゴリ:Jリーグ

芥川和久

2019年05月18日

「僕たちには見えない何かが見えている」

タヴァレス監督の下で主力として活躍した渡邊。その手腕に感謝の言葉を述べた。写真:滝川敏之

画像を見る

 そして今季、野村が徳島に移籍したことがまずひとつの痛手だった。5-3-1-1を成り立たせるために野村は代えの効かないピースだった。チームはその補強として磐田から松浦拓弥を獲得した。確かに松浦は攻撃でボールを持てば野村を上回るが、守備の献身性と危機察知能力を含めボランチの位置で野村の代わりを務める選手ではなかった。開幕2試合で松浦は出場せず、今季は連敗スタートだった。
 
 そこで3節の栃木戦からは3-4-2-1を導入。前線のイバ、L・ドミンゲス、松浦のトライアングルはリーグ屈指の陣容であり、ボランチを一枚削ったぶん守備力は低下するが、それを補ってあまりある攻撃力があるはずだった。これが今年のチームの最適解とタヴァレス監督は思ったはずだ。ただ、シャドーのポジションにL・ドミンゲスが入る以上、守備時に5-4-1のブロックを作って後ろで人数をかけて守ることができず、前からボールを奪いに行かなければならなかったし、攻撃時も全体でよりボールを保持することが求められた。

 つまりはカウンターからポゼッションへと、昨季からチームのスタイルごと転換せざるを得なくなったのだ。しかしタヴァレス監督は、組織的な守備やポゼッションをチームに落とし込む手腕は持ち合わせていなかった。これが今季の不振の最大の要因だ。

 序盤はまだ運もあった。連敗で迎えた3節の栃木戦では、0-0から最後の後半アディショナルタイムに途中出場の戸島章がゴールをもぎ取った。その後も調子は上がらなかったが、連敗はせず耐え続けながら試行錯誤は続いた。松井大輔の左ウイングバック、田代真一のボランチ、斉藤光毅ら若手の抜擢など選手起用の工夫に加え、試合の途中から攻撃的な4バックにも変更したが、90分通して安定した戦い方はなかなかできず、頼みの綱のL・ドミンゲスのパフォーマンスもこの時期はまだ上がってこなかった。もともと戦術という軸がないだけに、結果がついてこないことで選手たちからの求心力も低下した。
 
 そして迎えた12節のホーム京都戦。今季初めてゲームの最初から4バックで意欲的に挑んだが、今季最悪の内容で完敗する。ここがもはや限界だった。13節、最後の試合となったホーム町田戦。先制されるも追いつき、後半アディショナルタイム。ペナルティエリア内で瀬沼の決定機は町田のGKに防がれる。ついには運にも見放された。町田戦の2日後、クラブは公式にタヴァレス監督の解任を発表した。
 
 不思議な監督だった。戦術家ではなかったが、勝負師だった。そうは見えづらかったが、夢想家ではなく、徹底的に現実家だった。サッカーとしては内容に乏しく、結果を出し続けることで監督であり続けたが、結果が出なければ解任は仕方のないことだった。とはいえ横浜FCがJ2に降格した2008年以来で最もJ1に肉薄した監督であり、昨季にタヴァレス監督の作ったチームはサポーターの心に残り続けるだろう。
 
 最後に渡邊一仁の言葉を紹介してこの原稿を閉じる。
 
「難しい部分もあったけど、去年3位まで行ったのはタヴァレス監督のおかげ。ああいうチーム作りは計算だったかもしれない。僕たちには見えない何かが見えている、そういう雰囲気はあった」

取材・文●芥川和久(フリーライター)
【関連記事】
二枚看板の不振で14位に低迷…昨季3位の横浜FCが浮上する策は?
【U-20日本代表】横浜FCで好調の斉藤光毅、「海外経験」や「世界大会」について聞いた選手は?
【横浜FC】衝撃の采配!CB抜擢に松井大輔は「ちょっと笑っちゃった」
その才能は久保建英に匹敵!? 斉藤光毅がSBS杯で示した「16歳Jデビュー」をできたワケ
【横浜FC】「価値ある試合だった」グングン急上昇中の17歳・斉藤光毅に大化けの予感

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ