「無茶な練習だったけど…」破天荒な勝負師・タヴァレス監督が横浜FCに残したもの

カテゴリ:Jリーグ

芥川和久

2019年05月18日

「試合になって余裕を持てるところもあったかな」

5月14日に横浜FCのタヴァレス監督が解任されたが、昨季3位の成績は称えられるべきだろう。写真:滝川敏之

画像を見る

 横浜FCのタヴァレス監督が解任された。17年の終盤に就任し、昨季はJ2降格以来の最高順位である3位にチームを躍進させた。プレーオフに敗れてJ1昇格は叶わなかったが、J2優勝を飾った松本とは勝点1差、2位で自動昇格した大分とは得失点差での3位であり、J1まで本当にあと一歩のところまでチームを導いた。

 当然、今季にかかる期待は大きかったが、開幕連敗するなど波に乗れないまま13節の町田戦に1-1で引き分け、解任が決まった。クラブはその解任理由として、上尾和大・代表取締役社長COOが「成績不振」を挙げ、服部健二・ゼネラルマネージャーはもうひとつ「選手への求心力の低下」を挙げた。

 結論から言えば、解任は至極妥当なものだった。

 タヴァレス監督のチーム作りは独特だった。目指すサッカーのスタイルを、選手たちに対しても具体的に口にすることはなかった。それを言い表わすならば、「選手たちに自由を与え、それぞれの特性を存分に発揮させるサッカー」となるだろうか。ただ、そのために必要な、選手たちの特性の把握に時間がかかった。昨季序盤はシステムもメンバーも日替わり。歯車が噛み合って大勝するかと思えば、ひどい内容で大敗もした。
 
 しかし指揮官は11節で、昨季の横浜FCにおいて選手たちが特性を最大限に発揮する最適解を見つけていた。それは5-3-1-1システム。守備は5バックと3ボランチの人海戦術。自陣に引き込んで守り、イバとレアンドロ・ドミンゲスを中心にした速攻が効いた。この年のL・ドミンゲスは11得点・14アシストと手のつけられない活躍だったし、野村直輝と北爪健吾も守備のタスクをこなしながら、攻撃になると持ち前の運動量とスピードでサポートした。
 
 練習も一風変わっていた。試合の2日前は決まってプレスの確認および後ろからのビルドアップのトレーニングを行なったが、普通のチームのように対戦する相手の立ち位置や動きを想定して、それに対してパターンを落とし込んでいくことはやらなかった。それどころか、ある時はBチームのフィールド選手が11人いたり、12人いたりすることもあった。パターンや型をチームに落とし込むよりも、徹頭徹尾、臨機応変の対応力を選手に求めた。実際、佐藤謙介は「まあ無茶な練習だったけど、試合になって余裕を持てるところもあったかな」と証言する。
 
 前の試合を振り返って収穫や課題を洗い出すミーティングには、ベンチ入りのメンバーにプラス数名しか参加させなかった。そこに呼ばれなければ当然、チームに何が起こっているのか分からず、「いつの間にかやり方が変わっていた」と驚く選手もいた。ただでさえ通訳を介さなければならないこともあるが、説明することをあまり好まなかったため、選手の多くは「話が通じない」とコミュニケーションに難しさを感じていた。
 
 ただ、南雄太が「あの人はすごく運の良い監督だと思う」と言ったように、昨季はただの一度も連敗をしなかったばかりか、何度かあった「ここを落とせば解任になるのではないか」という試合にことごとく勝った。直前の3試合を1分2敗で迎えた34節のアウェー千葉戦では、千葉に支配率66.8%でボールを握られながらもワンチャンスを齋藤功佑が決めて勝利した。その齋藤はじめ瀬沼ら、怪我人が出た穴を埋めた選手が、たとえ本来のポジションではない起用でも活躍した。そういう賭けに一つひとつ勝ち続けた勝負師だった。
 
 昨季の結果が奇跡であったとは言わない。(番記者のひいき目かもしれないが)それだけの力を持った選手たちが揃っていたし、その力を引き出した点は評価すべきだ。ただ、そのあまりに選手個人の力に依存した戦術、独特すぎるチーム作りは、非常に危ういバランスの下で成り立っており、「勝ててるからみんな不満は出てないけど、連敗が続いたりしたらヤバい」と危機感を抱く選手も多かった。
【関連記事】
二枚看板の不振で14位に低迷…昨季3位の横浜FCが浮上する策は?
【U-20日本代表】横浜FCで好調の斉藤光毅、「海外経験」や「世界大会」について聞いた選手は?
【横浜FC】衝撃の采配!CB抜擢に松井大輔は「ちょっと笑っちゃった」
その才能は久保建英に匹敵!? 斉藤光毅がSBS杯で示した「16歳Jデビュー」をできたワケ
【横浜FC】「価値ある試合だった」グングン急上昇中の17歳・斉藤光毅に大化けの予感

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ