混迷を極めるブンデス2部の昇格争い。名門ハンブルクが勝ち抜くには、酒井高徳が必要だ。【現地発】

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2019年05月03日

勝ち抜くためには泥臭いプレーを

前節で酒井高はベンチ、伊藤はベンチ外だったが、ハンブルクに必要とされる存在だ。(C) Getty Images

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 ホームのウニオンが、情熱的に持てる力すべてを出し切る力強いプレーを見せていたのに対し、ハンブルクはすべてのプレーが消極的。相手のプレスをかいくぐることもできず、苦し紛れのロングボールを蹴ることしかできない。試合後、テレビ対応する数人の選手以外の取材対応は無かった。

 外目にも失望とイライラと焦りが選手からは見てとれる。スポーツディレクターのラルフ・ベッカーは「0-1となった後はひどかった。試合に負けることはある。ただ今日の後半みたいな戦い方はあり得ない」と嘆く。

 後半戦の順位では勝ち点16の14位。33節では2位パーダーボルンとの直接対決を残しているが、現在はそれをポジティブにとらえることができる空気がクラブにはない。それでもハネス・ボルフ監督を更迭するという最後の手段には出ない。

 ベッカーSDは「監督に責任を押し付けるのは簡単だ。だが誰かを犠牲にするつもりはない。問題はそこにはない」と語っている。だが、責任どうこうの話ではないはずだ。谷底に落ちていくチームの状態を再び浮上させる手腕を見せることはできるかどうかだ。

 ベッカーSDは「誰を信頼したらいいのかが重要だ。チームのために働ける選手が必要だ」と語る。それは確かだ。ハンブルクはキレイなサッカーをしようとしている。

 だが、それはクラブとしての気質とも関係がある。名門クラブとしてのプライドがいまでも残っているようだ。それでいてきれいなプレーだけで勝てるほどのクオリティは残念ながらない。だから、ウニオン戦のように相手がぎりぎりのところまで体を張り、ファールすれすれのプレーでこられると、どんどん押し込まれてしまう。

 ハネス・ボルフ監督は急遽、短期合宿を行うことにしたようだ。ここでチームとして。チームの勝利のためだけに戦う決意をすることができるか。できなければゲームオーバーだ。

 こんな時だからこそ、酒井高徳の起用に期待している。チームの中で誰よりも体を張り、限界まで走り、チームとしての戦い方を理解し、周りの選手を動かし、そのためにどんな試合でも全力で戦うことができる選手だからだ。

 伊藤達哉も、コンディションに問題がなければ、停滞続きの攻撃陣に変化をつけることができる存在のはず。ボルフ監督はどんな決断をするだろうか。そしてハンブルクは再び笑うことができるだろうか。

 ハンブルクは現地時間5月4日にインゴルシュタットと対戦する。

文:中野 吉之伴

【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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