監督ひとりに全てを背負わせないという配慮
一方、監督を更迭するのではなく、監督へのサポート体制を強化するという選択をしたのがアウクスブルクだ。
19節のボルシアMG戦に1-2で敗れた後、DFマルティン・ヒンターエッガーが、「監督についてポジティブなことは、何も言えない」と話すなど、チーム内の雰囲気は険悪に……。マヌエル・バウム監督のポジションは危ういと思われた。
19節のボルシアMG戦に1-2で敗れた後、DFマルティン・ヒンターエッガーが、「監督についてポジティブなことは、何も言えない」と話すなど、チーム内の雰囲気は険悪に……。マヌエル・バウム監督のポジションは危ういと思われた。
だがクラブが断行したのは、指揮官のクビを切ることではなく、ヒンターエッガーの謹慎処分。その上で、バウム監督のチーム作りの丁寧さ、戦術理解などに、今でも変わらぬ信頼を寄せている首脳陣は、彼ひとりに全てを背負わせないよう配慮すべきとの判断を下した。
そのためのサポート役として、元ドイツ代表GKイェンス・レーマンを、アシスタントコーチとして新しくコーチングスタッフに迎え入れた。
レーマンの役割は、経験の注入と守備陣の整理。バウム監督は、「我々に欠けているのは、いわゆる経験という点だ。イェンスには、まさにそれがあるし、伝えることができる。そして我々が抱える、守備の問題を改善すること。それが、彼に取り組んでもらうテーマだ」と明かしている。
本来、守備の堅牢さが特徴のアウクスブルクだが、ここ最近は軽率なミスが目立つ。レーマンの招聘は、自分たちの強みを取り戻し、粘り強い戦いぶりを思い出すための一助となるだろうか。
「カフェで会って、サッカーについて会話を交わした。盛り上がりすぎて、店が閉まるまで話し続けたよ」と、バウム監督はレーマンとの出会いを陳述する。お互いの仕事を支え合い、新しい息吹をもたらすことができれば、挽回もまだまだ十分に可能だろう。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。