守備においても、日本の思惑通りに進んでいきました。日本は待ち構えた守備ではイランの攻撃に対応が難しくなるため、いかにプレスでロングボールを蹴らせるかが重要になる試合でしたが、高い位置でのプレスも機能していました。早めに高い位置からチェックに行き、蹴らせることができれば、イランが作り込んでいるサイドの崩しは出ません。イランも前半の半ばを過ぎたあたりからは十分につなげたはずなのですが、この日は、どこかアズムン選手を頼ってしまって、安易にロングボールを合わせてくれました。
 
　サッカーは「対相手」で推移していきますので、イランの狙いのほとんどが、日本に好転したことも考えておくべきでしょう。特にトーナメントでは「対相手」をしっかりと持っているチームの方が「こんなはずじゃなかった」とならないために、勝ち進むことが多いと思います。
 
　裏を返せば、決勝は立場がひっくり返って、相手が「対日本」を明確に用意して挑んできます。やりにくさは、今まで以上に感じるかもしれません。その時に、「３−０で勝った後に敗れてしまったイラン」のようにならないようにしなくてはなりません。ただ、それも選手たちは理解しているはず。心配はいらないでしょう。
 

　最後に言及したいのは、勝負を分けたディテールの部分です。サッカーとはいつも「ディテールの勝負」だと言われます。それはレベルが拮抗すればするほど。
 
　そこで勝負を決めるのはいつも「隙」です。日本はイランよりも隙を見せませんでした。大迫選手が決めた１点目。倒れてもすぐに起き上がってボールを追いかけた南野選手とプレーを止めてしまったイランの選手。ゴール前に走った大迫選手も含めて、相手の隙を見逃さずにゴールにつなげた日本の決勝点は、選手たちの日常が作り出したものです。練習の中からプレーを止めない。続ける。その積み重ねが瞬時の判断を分け、勝負を分けました。
 
　森保監督の描くチームの形はここでひとつの完成をみました。あとひとつ――。

【著者プロフィール】
岩政大樹（いわまさ・だいき）／1982年１月30日、山口県出身。鹿島で不動のＣＢとし2007年から前人未踏のＪ１リーグ３連覇を達成。2010年の南アフリカW杯メンバーにも選出された。現在は解説者として活躍中。

【日本代表PHOTO】日本３-０イラン｜強敵イランを相手に大迫、原口の得点で３発快勝。２大会ぶりの優勝へ決勝進出を果たす

【サポ―ターPHOTO】熱く会場を盛り上げた美女、キッズ、日本サポ―ター特集！佐々木翔のそっくりさんも！？