長所を出し、短所を消す術

ここまでは全てが上手くいっている森保監督だが、この先、公式戦や親善試合を重ねながら、組織プレーを熟成させ、選手層に厚みを加えるなど、多くの仕事が待っている。 (C) Getty Images
特記すべきは、プレーの連続性でウルグアイを上回った点にあるだろう。
それは、過去の日本代表では弱点のひとつと指摘され続けてきたポイントである。攻めた後に一段落し、守った後に一息ついてしまう。攻守が分断される傾向があった。
それは、過去の日本代表では弱点のひとつと指摘され続けてきたポイントである。攻めた後に一段落し、守った後に一息ついてしまう。攻守が分断される傾向があった。
しかしこの夜は、攻めながら守り、守りながら攻める、という連続性を示した。プレースピードとスキルのコンビネーションで、強豪すら圧倒したのだ。
69分には、ベストプレーのひとつが見られた。高いインテンシティーで挑んだ試合だけに、強度が落ちても不思議ではない時間帯。しかし日本は、攻守に分厚さを感じさせた。
中盤で遠藤が相手のボールを奪った後、右サイドに持ち運び出し、幅を作る。相手を広げると、右サイドを駆け上がった酒井宏樹へ内側(にできたスペース)へのスルーパス。酒井は力強いドリブルで相手DFよりも一歩先に出て、中央にクロスを送る。これに反応した大迫勇也のシュートはバーを越えたものの、出色のコンビネーションプレーだった。
「形よりも、勝ちにこだわった」
森保監督は言ったが、「勝つために良いプレーをする」というのが常道であって、その点、今後の指針となるような勝利を挙げたと言える。
前輪駆動――
自陣に近づけず、敵陣を戦場とすることで、長所を出し、短所を消せるのだ。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。