浮かれもせず、悲嘆もせず――

ハノーファー戦での勝利から上昇の一途をたどるフランクフルト戦。先週末はヨビッチの5得点などで圧勝し、ヨーロッパリーグでも格下アポロン・リマソルを難なく下し、公式戦5連勝を達成した。 (C) Getty Images
7節ホッフェンハイム戦では、相手に押し込まれながらも、一瞬の隙を突いたレビッチのゴールなどで2-1の勝利。ようやく流れを掴むと、前節デュッセルドルフ戦で(7-1)は、全ての局面で相手を上回った。
中盤では、ルーカス・トッロが攻守のバランスを取り、両サイドからはスピードある選手が何度も飛び出して相手を押し込んでいく。FWのセバスティアン・アレが抜群のポストプレーで相手の守備を無力化し、その周りでルカ・ヨビッチが躍動。放ったシュートのほとんどが枠を強襲し、1人で5ゴール! ヒュッター監督の表情も、さすがに満足気だった。
中盤では、ルーカス・トッロが攻守のバランスを取り、両サイドからはスピードある選手が何度も飛び出して相手を押し込んでいく。FWのセバスティアン・アレが抜群のポストプレーで相手の守備を無力化し、その周りでルカ・ヨビッチが躍動。放ったシュートのほとんどが枠を強襲し、1人で5ゴール! ヒュッター監督の表情も、さすがに満足気だった。
このようにチームが勢いを増すなかで、冷静に、非常に重要なプレーを続けているのが長谷部だ。3バックのセンターで連続出場を続けている彼は、正確なポジショニングと落ち着いたプレーでチームを統率。190センチ台の相手FWとマッチアップになっても、ほとんどのシーンで抑え切っている。
さらに、試合の流れ、相手の動き出しから、次のプレーを読み切り、ボールを奪う。その一連の動きは、見ていて本当に美しい。あまりにも簡単にカットしていくので、相手が長谷部に向けてパスをしているかのように見えるほどだ。
「感覚として、良い状態にあるというのは、やっていて感じます。フィーリングというのは、言葉ではなかなか説明できないんですけど、読みだったりとか、そういう部分が、自分のなかでは良い状態にあるのかなと思うんです。
このチームでは、ローテーションして毎回出た選手が、しっかりと結果を残しています。1、2試合良くなかったら(メンバーから)外される、というのがあるのかなと。コンスタントに、これを続けていきたいです」
充実の表情で、じっくりと言葉を選びながら質問に答えていく。チームメイト、監督からの信頼も変わらずに厚い。経験というものの価値を、しっかりとチームに還元できる選手だ。
「とはいっても、シーズンはまだ始まったばかり」
勝って浮かれることはなく、負けても必要以上に悲嘆しない。いつでも次を目指して、標準を定め、じっくりと仕上げていく。そんな長谷部の存在とともに、フランクフルトはようやく、今シーズンのスタートを切ることができた。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。