ドリブルと素走りの差がない。
POINT④
■股関節、膝関節、足関節の安定感
速い選手は、ドンっと片足が地面に着地したときに、股関節、膝関節、足関節という3関節の角度が変わりません。遅い選手ほど膝が曲がったり、股関節が開いたりして、爪先で着地しても踵が潰れしてしまいます。要するに、速い選手は力を逃がさず推進力に代えることができている。例えば堅い棒を落とした時は大きく跳ね返るけど、それがこんにゃくなら潰れてしまいますよね。それと同じ原理です。
エムバペは、それぞれの角度がほとんど変わっていません。一歩一歩の着地で力がまったく逃げていない。だからぐんぐん進んでいける。強いボールを蹴る時もそうですが、大事なのはインパクトです。走りの接地もまったく一緒で、「べたっ」ではなく「トンっ」と、いかに短時間で(地面に)高出力を加えられるかが重要です。エムバペはそれをこなせている。これも速く走れる秘訣だと思います。
■股関節、膝関節、足関節の安定感
速い選手は、ドンっと片足が地面に着地したときに、股関節、膝関節、足関節という3関節の角度が変わりません。遅い選手ほど膝が曲がったり、股関節が開いたりして、爪先で着地しても踵が潰れしてしまいます。要するに、速い選手は力を逃がさず推進力に代えることができている。例えば堅い棒を落とした時は大きく跳ね返るけど、それがこんにゃくなら潰れてしまいますよね。それと同じ原理です。
エムバペは、それぞれの角度がほとんど変わっていません。一歩一歩の着地で力がまったく逃げていない。だからぐんぐん進んでいける。強いボールを蹴る時もそうですが、大事なのはインパクトです。走りの接地もまったく一緒で、「べたっ」ではなく「トンっ」と、いかに短時間で(地面に)高出力を加えられるかが重要です。エムバペはそれをこなせている。これも速く走れる秘訣だと思います。
POINT⑤
■初速の速さを支えるテクニック
1~2歩で置き去りにできる初速の速さについては、身体能力というよりも、どちらかと言えばテクニックの要素が大きいです。例えば重たいものを持つとき、背中から腰までのラインが真っすぐになっているデッドリフトのような姿勢、いわゆる腰が入った状態を作れていれば、腰も痛めず力が出せる。これに近い理論です。
陸上のスタートも同じ。ヨーイドンで走った時に、加えるべき力の方向は真下なんです。前に飛び出ているように映りますが、足は真下に降ろしている。サッカーで初速が速い人は、これが出来ています。エムバペもそうですね。(陸上100㍍競技の世界記録保持者である)ウサイン・ボルトのスタートと同じような形で、彼は初速を作れています。
Q.さらに速くなる余地はありますか?
A.十分にあります。
現状、上半身と下半身のタイミングが微妙に合っていません。片方の腕を伸ばす癖が、エムバペにあります。ショート系のスプリントで細かい動きをする時は直るんです。これは当たり前で、腕を伸ばしてしまうと速い動作はできませんからね。ドリブルするときに無意識にバランスを取っている側面もあるとは思いますが、このあたりがもっと(下半身の動きと)噛み合ってくれば速くなると思います。
あとは単純に筋力の部分。まだ19歳ですからね。ロナウドと比べても、筋力は弱いと思います。ここは十分に鍛えられる部分でしょう。
●分析者プロフィール
秋本真吾/プロスプリントコーチ
福島県大熊町出身。速く走るためのスプリント指導のプロフェッショナル集団「0.01」の代表。2012年まで400mハードルの陸上選手として活躍し、オリンピック強化指定選手にも選出される。当時、陸上特殊種目200mハードルアジア最高記録、日本最高記録、学生記録を樹立した。100mのベストタイムは10秒44。16年全日本マスターズ陸上において100mで優勝。13年からスプリントコーチとしてプロ野球選手やJリーガー、なでしこリーグ所属選手、アメリカンフットボール選手、ラグビー選手など300名近くのプロスポーツ選手に走り方を指導。全国各地で年間1万人以上の子どもたちに小学生向けの走り方教室も開催している。11年に被災した地元「大熊町」のために被災地支援団体『ARIGATO OKUMA』を立ち上げ、子どもたちへのスポーツ支援、キャリア支援も精力的に行なう。
※ワールドサッカーダイジェスト2018.9.20号より転載