ただ、それは外から観ている者の憶測にすぎない。チームを取り巻く環境はもっと複雑で、簡単なものではないだろう。
 
　森保監督は今回のシリーズでもことあるごとに「融合」という言葉を使っており、スカッドをひとつの機体と考えている。頭のなかに軸とする選手はいるのだとしても、現時点ではさまざまな組合せと相性を推し量っているのだろう。だからこそ、コスタリカ戦とパナマ戦ではどのメンバーが出場しても、チームは一定水準のパフォーマンスを維持できた。
 
　パナマ戦では終盤に追加招集の川又堅碁と北川航也がなんら違和感なくプレーしていたが、それも指揮官の手腕によるところが大きい。初期段階としては理想的な歩みを見せており、今後はどんどん巨大で高性能な“機体”となっていくだろう。

 

　個人的に北川は、今回のシリーズでぜひ観てみたい選手だった。Ｊ１リーグのFC東京戦とジュビロ磐田戦を取材し、清水エスパルスにおけるステータスを飛躍的に高め、スケールの大きなアタッカーに成長していると注目していたからだ。
 
　抜群の攻撃センスと打開力は言うに及ばず、献身的な守備が光る。クールなフィニッシュも持ち味なのだが、清水では傍らに絶好調のドウグラスがいるため、彼がいない状況での北川を観たかった！　パナマ戦では得点こそ奪えなかったが動きには切れがあり、短い時間だったが、フル代表のステージでも十分に戦えることを確認できた。
 
　フットボールチームには、言うなればジェットコースターのような時期がある。
 
　日本代表の１年間はまさにそう。いまから13か月前に勢いのままワールドカップ出場権を手に入れ、強化は順風満帆かと思われた。しかしそれ以降は急停止を余儀なくされ、格上相手のゲームではまるで力を示せず、どん底を味わうのだ。そこから不死鳥のごとく甦り、ロシアで世界をあっと驚かせるパフォーマンスを披露したのは記憶に新しい。ずっと起用されず、招集もされていなかった選手たちがあれだけの躍動を見せるなど、いったいどれだけのひとが予測できただろうか。