恐れているのはアルゼンチンの戴冠。
ミネイラッソから2日後、街はいつもの喧騒を取り戻した。
ブラジル人はとても優しく、親切で、その気質はミネイラッソの前後でまったく変わっていない。目が合うと、にっこりと微笑んでくれる。だが彼らが深い悲しみに暮れていることは、ぼくにもわかる。あれほど誇らしげに身につけていたカナリア色のユニホームを、着ることをやめてしまったからだ。
あの敗戦を境にブラジル中の街角から、カナリアが消えてしまった。着ているだけで歓びと誇りを与えてくれたユニホームが、あの90分、いや4点を失った7分間で、恥の象徴に変わってしまったからだ。
ブラジル人はとても優しく、親切で、その気質はミネイラッソの前後でまったく変わっていない。目が合うと、にっこりと微笑んでくれる。だが彼らが深い悲しみに暮れていることは、ぼくにもわかる。あれほど誇らしげに身につけていたカナリア色のユニホームを、着ることをやめてしまったからだ。
あの敗戦を境にブラジル中の街角から、カナリアが消えてしまった。着ているだけで歓びと誇りを与えてくれたユニホームが、あの90分、いや4点を失った7分間で、恥の象徴に変わってしまったからだ。
ミネイラッソの翌日、サンパウロでアルゼンチンとオランダの準決勝が行なわれた。同じスタジアムでアルゼンチン対スイス戦(決勝トーナメント1回戦)があったとき、観客席にはたくさんのカナリアがいた。だが、準決勝にはほとんどいなかった。スタジアムに足を運んだブラジル人の大半は、オレンジのシャツを着ていたからだ。
セレソンの優勝が消えたいま、もはや彼らにできることは宿敵アルゼンチンの優勝を阻止することだけ。カナリアたちはオレンジ軍団に加勢したのだ。
アルゼンチン対スイス戦では、アルゼンチン人が歌うたびにブラジル人が「ペンタ・カンペオン」と叫んだ。「俺たちは5回優勝したんだ。お前らは何度勝った?」という意味だ。だがアルゼンチン対オランダ戦では、アルゼンチン人たちがしきりに「7!」と叫び、ブラジル人たちは返す言葉もなくなっていた。
アルゼンチンがマラカナンでカップを掲げたら、それは21世紀のマラカナッソ(マラカナンの悲劇)になってしまう。カナリアの消えた街角、人々は日常を取り戻したように見えるが、心の奥深くでミネイラッソを悲しみ、アルゼンチンの戴冠を恐れているのだ。
取材・文:熊崎敬
セレソンの優勝が消えたいま、もはや彼らにできることは宿敵アルゼンチンの優勝を阻止することだけ。カナリアたちはオレンジ軍団に加勢したのだ。
アルゼンチン対スイス戦では、アルゼンチン人が歌うたびにブラジル人が「ペンタ・カンペオン」と叫んだ。「俺たちは5回優勝したんだ。お前らは何度勝った?」という意味だ。だがアルゼンチン対オランダ戦では、アルゼンチン人たちがしきりに「7!」と叫び、ブラジル人たちは返す言葉もなくなっていた。
アルゼンチンがマラカナンでカップを掲げたら、それは21世紀のマラカナッソ(マラカナンの悲劇)になってしまう。カナリアの消えた街角、人々は日常を取り戻したように見えるが、心の奥深くでミネイラッソを悲しみ、アルゼンチンの戴冠を恐れているのだ。
取材・文:熊崎敬