新生ガンバで指揮官ツネが明快にしたかった色──それが秘蔵っ子の“ヤン”だった

カテゴリ:Jリーグ

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2018年07月29日

「プレッシャーが掛かれば掛かるほど、燃えるタイプなんです」

システムも陣容もいたって堅実な選択。だが、指揮官ツネがたったひとつだけ打って出た大胆策が“ヤン”の先発起用だった。写真:川本学

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 高1から主軸を張ってきた高は、高3になると、ボランチへのコンバートを言い渡される。チーム事情もあったが、市船の朝岡隆蔵監督は「彼のゲームを読む眼と献身性、パスのセンス。すべての能力を最大限に発揮してくれると信じればこそです」と、その理由を明かしてくれた。意気に感じた背番号10は、瞬く間にチームを掌握。インターハイ制覇の原動力となると、選手権予選前にはガンバ大阪への入団内定が決まった。どこかでプロは厳しいかもしれないと感じていたが、ボランチという新境地が、彼のキャリアを前へ押し進めたのだ。
 
 だが、プロに入ったヤンを待っていたのは厳しい現実だった。
 
 ガンバ1年目はトップとU-23チームが完全に別行動を取っていたため、遠藤保仁や今野泰幸、井手口陽介といったボランチの重鎮から技を盗む機会さえ奪われた。しかも練習をする絶対数が少なく、U-23チームはユースの選手を多数引き込みながら修練を重ねた。練習場も遠い堺へ遠征したり、近隣の山の上にあるサッカー場へ赴くなどチームにとっても苦難の日々。市船で同級生の杉岡大暉(湘南ベルマーレ)と原輝綺(アルビレックス新潟)はルーキーイヤーでしっかり足場を固めた。焦りがなかったと言えば、嘘になる。

 2年目、レヴィー・クルピ政権となっても逆風は変わらない。年下でルーキーの中村敬斗や福田湧矢、同期の食野亮太郎らがチャンスを得るなかで、高はベンチ入りさえ果たせない。心が折れそうになったのは、一度や二度ではなかったはずだ。

 
 入団からおよそ1年半、そんな高と苦楽を共にしてきたのが宮本監督だった。
 
 ヤンは熱っぽく、こう振り返るのだ。
 
「もともと守備が売りではなかった僕が、これで生きていこう、これならプロでやっていけると思えるようになった。そう信じさせてくれたのはツネさんです。入団してからずっと、常に寄り添ってアドバイスをくれて、個人ミーティングも何回もやってくれました。ツネさんに恩返しがしたい、勝ってもらいたい、今日はその一心で死ぬ気で戦いました」
 
 土曜日の鹿島アントラーズ戦が、高にとってのJ1デビュー戦となった。だが頭脳派MFはこの1年半、J3ながらU-23の一員として44試合(3得点)に出場している。これはなかなかの数字だろう。ヤンには、同年代の誰よりもプロの舞台で実戦感覚を磨いたという自負がある。チームではキャプテンを任されることも多かった。
 
「監督がやりたいサッカーを、僕がいちばん理解しているという想いはあります。この半年間は自分との戦いでしたし、厳しい状況に何度も追い込まれましたけど、その悔しさのすべてをぶつけました。ヤット(遠藤)さんからは『攻撃はシンプルにやろう。俺らボランチがシンプルに作ろう』と言ってもらって、それを意識しつつ、自分の長所である守備のところはガツガツ行こうと。その強みはみんな知ってくれてたんで、思い切りやれました。これだけの大観衆の前で、しかも相手があの鹿島。どこか、楽しめてる自分がいました。プレッシャーが掛かれば掛かるほど、燃えるタイプなんです」
 
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