淡白に敗れる西野ジャパンに問いたい。「なぜ、ポジティブでいられるのか」と

カテゴリ:日本代表

吉田治良

2018年06月11日

8年前に岡田監督がやってのけたことのほうがギャンブルだ

8年前は岡田監督が注入した劇薬によって、チームはぎりぎりの段階で“ワールドカップ仕様”へと大きく舵を切った。(C)SOCCER DIGEST

画像を見る

 岡田監督がそれまでのやり方──高い位置からプレスを掛けて、自ら試合の主導権を握るサッカー──を放棄し、より現実的かつ守備的な戦術にシフトすると決めたのは、カメルーンとの初戦の約2週間前だったと言われている。そして、試行錯誤を経て、本田を1トップで起用する“ゼロトップ・システム”が実戦のピッチでお披露目されたのは、同じくカメルーン戦のわずか4日前(急きょ組まれたジンバブエ代表との練習試合)。従来のパスサッカーの象徴とも言えた中村俊輔を控えに回す、まさしく戦術の大転換であった。
 
 岡田監督が注入した劇薬によって、チームはぎりぎりの段階で“ワールドカップ仕様”へと大きく舵を切るのだが、同時にこれは選手間の競争意識や危機感を煽る効果ももたらしている。悪い流れを変え、閉塞感を打破するには、それくらいの思い切った策や刺激が必要なのだろう。
 
 ワールドカップ開幕2か月前に起こった今回の監督交代劇を、無謀なギャンブルと見る向きもある。しかし、23人枠の人選や選手起用も含めて、西野監督のここまでの取り組みは決して想像の範疇を超えるものではない。8年前に岡田監督がわずか2週間でやってのけたことのほうが、ギャンブルと言えばよほどのギャンブルだ。
 
 今の代表チームから、良く言えば平穏な、悪く言えば座して死を待つような達観した空気が漂うのはなぜだろう。
 
 スイスに0-2の完敗を喫した後の記者会見で、「今のチームに危機感を感じているか?」と問われた指揮官は、こう答えている。
 
「なぜ、ネガティブにならないといけないのか。チームとしての危機感はまったく感じていない」
 
 監督就任後の2試合は、いずれも絶対にやってはいけない先制点をあっさりと与え、ゴールが生まれる予感さえ漂わせることなく、終始淡白なまま敗れた。だから逆に問いたい。「なぜ、ポジティブでいられるのか」と。
 
 それが一世一代の死んだふりなら、喜んで気付かないふりをしよう。けれど、あのサッカーに指揮官が本気で可能性を感じているとしたら──。
 
 8年前の岡田監督は、それまでのサッカーでは世界を相手に通用しないと、水中深く潜航しながら勝つための策を巡らせ、そしてギャンブルに打って出た。
 
 当時、解任キャンペーンの先陣を切った『週刊サッカーダイジェスト』には、岡田ジャパンのベスト16進出が決まると抗議の電話やメールが相次いだし、ネット上でもずいぶん叩かれたものだ。
 
「岡田監督に謝れ」
 
【関連記事】
【パラグアイ戦のスタメン予想】トップ下は香川でCFは…。右サイドは仰天プランも?
「難しいなーと思うのが…」本田圭佑が悩める胸中をツイート。活発な議論の先に何が?
【スイス戦|動画&記事一覧】解説:セルジオ越後、釜本邦茂、松木安太郎、採点&寸評、プレー分析、PHOTOギャラリーetc.
【セルジオ越後】日本は先制されたら、終わり。収穫はゼロ。一歩も進んでいない
【スイス戦|戦評】希望なき敗戦。「彼ならやってくれる」という期待は脆くも崩れ去った

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 唯一無二の決定版!
    2月15日発売
    2024 J1&J2&J3
    選手名鑑
    60クラブを完全網羅!
    データ満載のNo.1名鑑
    詳細はこちら

  • 週刊サッカーダイジェスト いざW杯予選へ!
    3月8日発売
    元代表戦士、識者らと考える
    日本代表の現在地と未来
    2026年へのポイントは?
    J1&J2全クラブ戦力値チェックも
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 夏の移籍を先取り調査!
    3月21日発売
    大シャッフルの予感
    SUMMER TRANSFER
    夏の移籍丸わかり
    完全攻略本2024
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ