8年前に岡田監督がやってのけたことのほうがギャンブルだ
岡田監督がそれまでのやり方──高い位置からプレスを掛けて、自ら試合の主導権を握るサッカー──を放棄し、より現実的かつ守備的な戦術にシフトすると決めたのは、カメルーンとの初戦の約2週間前だったと言われている。そして、試行錯誤を経て、本田を1トップで起用する“ゼロトップ・システム”が実戦のピッチでお披露目されたのは、同じくカメルーン戦のわずか4日前(急きょ組まれたジンバブエ代表との練習試合)。従来のパスサッカーの象徴とも言えた中村俊輔を控えに回す、まさしく戦術の大転換であった。
岡田監督が注入した劇薬によって、チームはぎりぎりの段階で“ワールドカップ仕様”へと大きく舵を切るのだが、同時にこれは選手間の競争意識や危機感を煽る効果ももたらしている。悪い流れを変え、閉塞感を打破するには、それくらいの思い切った策や刺激が必要なのだろう。
ワールドカップ開幕2か月前に起こった今回の監督交代劇を、無謀なギャンブルと見る向きもある。しかし、23人枠の人選や選手起用も含めて、西野監督のここまでの取り組みは決して想像の範疇を超えるものではない。8年前に岡田監督がわずか2週間でやってのけたことのほうが、ギャンブルと言えばよほどのギャンブルだ。
岡田監督が注入した劇薬によって、チームはぎりぎりの段階で“ワールドカップ仕様”へと大きく舵を切るのだが、同時にこれは選手間の競争意識や危機感を煽る効果ももたらしている。悪い流れを変え、閉塞感を打破するには、それくらいの思い切った策や刺激が必要なのだろう。
ワールドカップ開幕2か月前に起こった今回の監督交代劇を、無謀なギャンブルと見る向きもある。しかし、23人枠の人選や選手起用も含めて、西野監督のここまでの取り組みは決して想像の範疇を超えるものではない。8年前に岡田監督がわずか2週間でやってのけたことのほうが、ギャンブルと言えばよほどのギャンブルだ。
今の代表チームから、良く言えば平穏な、悪く言えば座して死を待つような達観した空気が漂うのはなぜだろう。
スイスに0-2の完敗を喫した後の記者会見で、「今のチームに危機感を感じているか?」と問われた指揮官は、こう答えている。
「なぜ、ネガティブにならないといけないのか。チームとしての危機感はまったく感じていない」
監督就任後の2試合は、いずれも絶対にやってはいけない先制点をあっさりと与え、ゴールが生まれる予感さえ漂わせることなく、終始淡白なまま敗れた。だから逆に問いたい。「なぜ、ポジティブでいられるのか」と。
それが一世一代の死んだふりなら、喜んで気付かないふりをしよう。けれど、あのサッカーに指揮官が本気で可能性を感じているとしたら──。
8年前の岡田監督は、それまでのサッカーでは世界を相手に通用しないと、水中深く潜航しながら勝つための策を巡らせ、そしてギャンブルに打って出た。
当時、解任キャンペーンの先陣を切った『週刊サッカーダイジェスト』には、岡田ジャパンのベスト16進出が決まると抗議の電話やメールが相次いだし、ネット上でもずいぶん叩かれたものだ。
「岡田監督に謝れ」
スイスに0-2の完敗を喫した後の記者会見で、「今のチームに危機感を感じているか?」と問われた指揮官は、こう答えている。
「なぜ、ネガティブにならないといけないのか。チームとしての危機感はまったく感じていない」
監督就任後の2試合は、いずれも絶対にやってはいけない先制点をあっさりと与え、ゴールが生まれる予感さえ漂わせることなく、終始淡白なまま敗れた。だから逆に問いたい。「なぜ、ポジティブでいられるのか」と。
それが一世一代の死んだふりなら、喜んで気付かないふりをしよう。けれど、あのサッカーに指揮官が本気で可能性を感じているとしたら──。
8年前の岡田監督は、それまでのサッカーでは世界を相手に通用しないと、水中深く潜航しながら勝つための策を巡らせ、そしてギャンブルに打って出た。
当時、解任キャンペーンの先陣を切った『週刊サッカーダイジェスト』には、岡田ジャパンのベスト16進出が決まると抗議の電話やメールが相次いだし、ネット上でもずいぶん叩かれたものだ。
「岡田監督に謝れ」