変則的な4‐4‐2を取り入れるにあたって大塚監督が参考にしたのは...
「これはエバートンがロベルト・マルティネス監督(2013~2016、現・ベルギー代表監督)の時に採用していたシステムなんです。ワイドトップにルカク(現・マンチェスター・ユナイテッド)らを置いていたので、それを参考にしました。これは初めてのシステムじゃなくて、3年前の選手権でベスト8まで行ったときに採用して以来なんです」(大塚監督)。
しっかりと中央で作って、サイドから崩す。今予選では初戦から6−0、15−0、8−0、2−0と無失点で決勝まで勝ち上がった。しかし、決勝の高岡一戦は「失点をしたくないという気持ちもあって、ちょっと受け身になってしまった」と富山一GK近藤昭宏(3年)が語ったように、最終ラインが下がって小森のゲームメークと左の高木俊希(2年)と右の佐々木大翔(3年)のワイドトップの連係もスムーズではなかった。
それでも抜群の安定感を誇る守備陣が失点を許さず、前半を0−0で折り返すと、後半は一転して攻撃的なサッカーを展開。GK近藤は変貌の理由をこう明かす。
「開始前に円陣を組んだ時に、『点を獲りにいこうぜ』という話になった。それならもっと最終ラインを上げて行こうと。DFの多賀(稔人)に『最終ラインの裏のケアを頼む』と言われたので、『任せろ』と答えました。全員が点を獲りにいく意識になりました」
5m近く最終ラインを上げたことで、高岡一陣内に富山一の選手が多く入るように。これにより、効果的なボールがワイドトップに入るようになった。前半はあまり最前線に飛び出していかなかった小森も頻繁に相手最終ラインの裏に行けるようになり、一気に富山一が試合のペースを掴んだ。
52分、左サイドの裏のスペースに抜け出した小森にパスが通ると、「高木と佐々木がゴール前に飛び込んでいくのが見えた」と正確なクロスを送り込む。これをニアで高木が高い打点のヘッドで合わせ、富山一が先制に成功した。
その後も攻撃の手を緩めない富山一がペースを握る。その一方で高岡一もボランチの大矢達輝(3年)、右MF水落健斗(3年)の正確なパスからFW木口フェリペ(3年)が果敢に最終ラインの裏を狙うが、GK近藤が抜群のタイミングの飛び出しを何度も見せ、『最終DF』として相手のカウンターを完結させなかった。試合はそのまま1-0で終了。富山一が無失点優勝を飾った。
「まだまだ連係面などでこちらが求めていることが出来ていないことが多かったけど、しっかりと守って勝てたこと、戦術的にしっかりと対応していくつかのフォーメーションが出来るようになったことは収穫」
大塚監督がこう語ったように、この予選で改めて富山一は、戦術的柔軟性と適応力の高さを実証してみせた。
「インターハイ本戦はどう戦うかまだ分からない」と大塚監督が不敵な言葉を残したように、三重の地でもこの柔軟性を発揮してくれるはずだ。まずは再開するプレミアリーグで勝点3を掴みとるべく、経験を積み重ねた彼らは新たなリスタートを切る。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
しっかりと中央で作って、サイドから崩す。今予選では初戦から6−0、15−0、8−0、2−0と無失点で決勝まで勝ち上がった。しかし、決勝の高岡一戦は「失点をしたくないという気持ちもあって、ちょっと受け身になってしまった」と富山一GK近藤昭宏(3年)が語ったように、最終ラインが下がって小森のゲームメークと左の高木俊希(2年)と右の佐々木大翔(3年)のワイドトップの連係もスムーズではなかった。
それでも抜群の安定感を誇る守備陣が失点を許さず、前半を0−0で折り返すと、後半は一転して攻撃的なサッカーを展開。GK近藤は変貌の理由をこう明かす。
「開始前に円陣を組んだ時に、『点を獲りにいこうぜ』という話になった。それならもっと最終ラインを上げて行こうと。DFの多賀(稔人)に『最終ラインの裏のケアを頼む』と言われたので、『任せろ』と答えました。全員が点を獲りにいく意識になりました」
5m近く最終ラインを上げたことで、高岡一陣内に富山一の選手が多く入るように。これにより、効果的なボールがワイドトップに入るようになった。前半はあまり最前線に飛び出していかなかった小森も頻繁に相手最終ラインの裏に行けるようになり、一気に富山一が試合のペースを掴んだ。
52分、左サイドの裏のスペースに抜け出した小森にパスが通ると、「高木と佐々木がゴール前に飛び込んでいくのが見えた」と正確なクロスを送り込む。これをニアで高木が高い打点のヘッドで合わせ、富山一が先制に成功した。
その後も攻撃の手を緩めない富山一がペースを握る。その一方で高岡一もボランチの大矢達輝(3年)、右MF水落健斗(3年)の正確なパスからFW木口フェリペ(3年)が果敢に最終ラインの裏を狙うが、GK近藤が抜群のタイミングの飛び出しを何度も見せ、『最終DF』として相手のカウンターを完結させなかった。試合はそのまま1-0で終了。富山一が無失点優勝を飾った。
「まだまだ連係面などでこちらが求めていることが出来ていないことが多かったけど、しっかりと守って勝てたこと、戦術的にしっかりと対応していくつかのフォーメーションが出来るようになったことは収穫」
大塚監督がこう語ったように、この予選で改めて富山一は、戦術的柔軟性と適応力の高さを実証してみせた。
「インターハイ本戦はどう戦うかまだ分からない」と大塚監督が不敵な言葉を残したように、三重の地でもこの柔軟性を発揮してくれるはずだ。まずは再開するプレミアリーグで勝点3を掴みとるべく、経験を積み重ねた彼らは新たなリスタートを切る。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)