後半になると飛ばしっぱなしの横浜が体力的に落ち、試合は打ち合いの様相を呈していく。ただし、減速した横浜から主導権を奪い切れず、打ち合いにしか持ち込めかったのが名古屋としては物足りないところだ。相手の運動量は落ちていたが、守備力も落ちたということはなく、名古屋がペースを掌握したとは言い難い。ジョーの同点ゴールは人数をかけた厚みのある攻撃から生み出された良い得点だったが、同時に攻守のバランスが良くなく、数多くのピンチも招いていた。

　宮原和也は苦み走った表情で端的に振り返る。
「あれはミッチ(ランゲラック)が止めてくれただけで、ああいうシーンは作らせてはいけなかった」
　オーストラリア代表の元監督と同僚を相手に燃えたか、この日のランゲラックは神がかっていた。背番号22が止めた決定機の数は少なく見積もって５回。劣勢からの勝点１獲得は、守護神の獅子奮迅の活躍なくしてあり得なかった。相手が落ちたからこそ支配力を高め、さらに消耗させた上で得点を奪い、試合を勝利に結びつけるのが彼らの目指すところであるはず。試合は観客が沸きに沸くエキサイティングな展開ではあったが、名古屋にとってはひどく不安定な戦い方であったことは間違いない。
 

　８連敗後の２戦連続の引き分けには底を打ったとばかりにポジティブな意見も多い。選手の間からも今は好意的な意見が聞かれ、「このままやり続けることで試合に勝てるようになるし、この苦境を乗り越えられると思う」とシャビエルも前を向く。その心の持ちようは間違っていないが、いまだ危機的状況に置かれていることから目をそらしてもいけない。11試合連続で勝てておらず、その間に得た勝点はわずかに３という数字は看過できるわけがない。８連敗から０-０、１-１とスコアの上では前進しているが、その歩みはあまりにも遅い。手遅れになる前に、彼らはトップスピードに乗らなければならない。リーグはもうすぐ、約半分を終えようとしているのである。

取材・文●今井雄一朗（フリーライター）