「運ぶ」「動かす」にエネルギーを割かず「抜け出す」「合わせる」に専念
城福監督も2018年の広島で「パトリックの長所だけを出す」ことに成功している。指揮官にその理由を尋ねると、こういう答えが返ってきた。
「いい守備からのいい攻撃というのをずっとやっている。カウンター、相手陣深くでボールを奪い返してもう一度サッカーをするところで、彼がゴール前にいたらボールが入る」
今季の広島は4-4-2のオーガナイズで、高い位置からボールを狩りに行っている。強度の高い守備から「ショートカウンターにつながる奪い方」をする場面が多い。だからパトリックはボールを「運ぶ」「動かす」ところにエネルギーを割かず、「抜け出す」「合わせる」ことに専念できている。今季の6得点を振り返ると、得意のヘディングは3点あるが、そういう形をチームで作れている。
一方でプレーヤーとしての成長、成熟を感じる部分もある。4月11日の横浜F・マリノス戦で決めたループシュート、同21日のサガン鳥栖戦で決めたミドルシュートなどは過去にない「クオリティ」を感じるものだった。今のパトリックはDFの視野から消える動きなど、フリーになるための駆け引きにも長けている。
「賢さを感じる」という筆者の感想を伝えると、パトリックはうなずき、「年を取っていっているので、経験から学んだことがある。そういうことかな」と返してきた。
25日のFC東京戦で広島は1-3と敗れた。FC東京は早々に2点を奪ったことで、エリア内を固め、ディフェンスラインも下げていた。それは、パトリックの強みがあまり出ない状況だった。彼はそれでも7本のシュートを放ち、クロスへの飛び込みなどで「怖さ」を見せたが、4試合連続得点はならなかった。
しかし、パトリックに気落ちした様子はなかった。
「我々はまだ1位なので焦る必要はない。10試合で1度しか負けていないのだから、首を垂れる必要もない。まだまだたくさんいい部分を出せると思うので、上を目指していきたい」
彼はのべ6シーズンで、J1の4クラブを渡り歩いている。G大阪では14年の三冠や翌年度の天皇杯制覇に貢献した一方で、16年10月には右膝の重傷を負い、1シーズン近くを棒に振る苦難も味わった。つまり歓喜と挫折の両方を経験しているわけだが、今季の活躍ぶりを見ると、そのすべてを糧にしている。
パトリックがメッシのようなテクニシャンに化けることは無いし、欠点の無いアタッカーになることもないだろう。ただ良いチームと巡り合えば彼の強烈な強みは生きる。何よりパトリックは30歳の今も成長し続けている。
取材・文●大島和人(球技ライター)
「いい守備からのいい攻撃というのをずっとやっている。カウンター、相手陣深くでボールを奪い返してもう一度サッカーをするところで、彼がゴール前にいたらボールが入る」
今季の広島は4-4-2のオーガナイズで、高い位置からボールを狩りに行っている。強度の高い守備から「ショートカウンターにつながる奪い方」をする場面が多い。だからパトリックはボールを「運ぶ」「動かす」ところにエネルギーを割かず、「抜け出す」「合わせる」ことに専念できている。今季の6得点を振り返ると、得意のヘディングは3点あるが、そういう形をチームで作れている。
一方でプレーヤーとしての成長、成熟を感じる部分もある。4月11日の横浜F・マリノス戦で決めたループシュート、同21日のサガン鳥栖戦で決めたミドルシュートなどは過去にない「クオリティ」を感じるものだった。今のパトリックはDFの視野から消える動きなど、フリーになるための駆け引きにも長けている。
「賢さを感じる」という筆者の感想を伝えると、パトリックはうなずき、「年を取っていっているので、経験から学んだことがある。そういうことかな」と返してきた。
25日のFC東京戦で広島は1-3と敗れた。FC東京は早々に2点を奪ったことで、エリア内を固め、ディフェンスラインも下げていた。それは、パトリックの強みがあまり出ない状況だった。彼はそれでも7本のシュートを放ち、クロスへの飛び込みなどで「怖さ」を見せたが、4試合連続得点はならなかった。
しかし、パトリックに気落ちした様子はなかった。
「我々はまだ1位なので焦る必要はない。10試合で1度しか負けていないのだから、首を垂れる必要もない。まだまだたくさんいい部分を出せると思うので、上を目指していきたい」
彼はのべ6シーズンで、J1の4クラブを渡り歩いている。G大阪では14年の三冠や翌年度の天皇杯制覇に貢献した一方で、16年10月には右膝の重傷を負い、1シーズン近くを棒に振る苦難も味わった。つまり歓喜と挫折の両方を経験しているわけだが、今季の活躍ぶりを見ると、そのすべてを糧にしている。
パトリックがメッシのようなテクニシャンに化けることは無いし、欠点の無いアタッカーになることもないだろう。ただ良いチームと巡り合えば彼の強烈な強みは生きる。何よりパトリックは30歳の今も成長し続けている。
取材・文●大島和人(球技ライター)