日本代表新監督・西野朗はいかにして、ガンバ大阪を強豪に鍛え上げたのか

カテゴリ:日本代表

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2018年04月10日

「圧倒して上回れ。相手より、まず自分たちだ」

ガンバでは個性的な若手を巧みな話術でその気にさせ、見事に才能を開花させた。名モチベーターである。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 必要以上に選手とコミュニケーションは取らないが、普段からじっくり観察していて、キャラクターによって接し方を変えていた。キャンプ中やアウェー滞在先のホテルでチーム全員が食事をしている際は、早めに会場に現われて個々がなにを口にするのか、どんな選手と話しているのか、表情はどうなのかをチラチラとチェック。実にさりげない。だから、選手たちには気づかれない。
 
 そうした行動を日課にしているから、投げかける言葉は中身もタイミングも絶妙だ。調子を落とす二川に「ガンバだけじゃなく日本を代表する10番になれ」と発破をかければ、壁にぶち当たっていた家長昭博には「トップパフォーマンスで言えばお前はメッシより上だ」と背中を押した。バルサを筆頭に海外サッカーもよく研究し、「世界を目ざせと選手たちに言い聞かせている指導者がドメスティックじゃダメだよね」と、話してくれたこともある。
 
 途轍もなく懐の深い指揮官と、水を得た魚のごとくピッチ上で躍動した才能たち。4点取られても5点を奪い取る破天荒なサッカーはこうして磨かれ、2005年のJ1初制覇を皮切りに、黄金期に突入していった。西野さんがこんな話をしていたのを思い出す。

 
「僕がやりたいサッカーは当然あるんだけど、それを彼らがピッチの上で上手くアレンジしながら、独自の形を磨いていったよね。いつもこう言っていた。『圧倒して上回れ。相手より、まず自分たちだ』と。自分たちのサッカーさえ貫ければ、どこにも負けないチームになっていたから」
 
 ただ、就任から7年目、8年目と長期政権が継続されると、求心力の低下は避けられなかった。あまりガンバの取材をしたことがない記者さんが、万博での練習を見てこう訊いてきたことがある。「ガンバっていつもこんなに練習が緩いの?」と。言われてみれば、たしかに。成熟し切ったチームはすでに大胆な変化を必要としておらず、刺激も乏しい。気づけばルーティーンをこなすばかりの“ぬるま湯”に浸かっていたのだ。
 
 西野体制が終焉を迎えた翌年、ガンバはJ2に降格した。
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