コミュニケーションを重視し、ドイツ語を話す

悪いイメージの方が先行している感のあるトゥヘルだが、彼が率いたドルトムントがハマった時の勢いと強さには凄まじいものがあった。理想主義者、完璧主義者であるがゆえの行動が、周囲を戸惑わせ、怒らせたのだろう。 (C) Getty Images
『ビルト』紙の情報によると、実はほとんどのバイエルン選手が、トゥヘルの監督就任に反対していたようだ。
代表取締役のカール=ハインツ・ルムメニゲは、ドルトムント代表取締役のハンス=ヨアヒム・ヴァツケや元ドルトムントのマッツ・フンメルスにアドバイスを求め、情報収集に尽力した。
フンメルスは普段であれば、記者の質問に親切に対応するのだが、トゥヘルの監督就任が噂に上がった時には、一言もコメントしていない。そうした事情からも、バイエルンもすぐの招聘に躊躇いを見せた。
バイエルンでは過去、ジョゼップ・グアルディオラがチームドクターのハンス=ヴィルヘルム・ミュラー=ヴォールファルトと衝突したり、アンチェロッティ時代には、アシスタントコーチやフィットネスコーチのトレーニングに対し、選手が反発したりする事態もあった。
アリエン・ロッベンやフランク・リベリといった、“簡単ではない”選手がいるなか、不必要な内部紛争を極力避けたいという首脳陣の意向も考えれば、トゥヘルがバイエルンに断りを入れたことは、結果としてどちらにとっても良かったのかもしれない。
では、実際にバイエルンは、どんな監督を求めているのだろうか。あるいはなぜ、ハインケスがここまで選手からも高く評価されているのだろうか。
元ドイツ代表キャプテンのローター・マテウスは、「彼以上の監督はいない。シンプルなやり方で全てをうまくやっている。これまでチームに欠けていたものが、全て戻ってきた。選手に対するリスペクトに溢れ、虚栄がなく、だが常にハードに取り組む。それをとても楽しみながらやっている点も、大事なのだと思う」とハインケスを評した。
つまり、選手の力を最大限に引き出す手腕と人間性こそが、バイエルンの指揮官には求められているのだ。
そうした観点からも、コミュニケーションを重視し、ドイツ語を話す監督が条件に挙げられ、RBライプツィヒのラルフ・ハーゼンヒュットル、フランクフルトのニコ・コバチ、ニースのルシアン・ファブレといった名前が、ドイツメディアを賑わしている。
また、ドイツ語は話せないが、トッテナムのマウリシオ・ポチェティーノ監督ともコンタクトは取っているという。いずれも、選手へ歩み寄る姿勢を保ちながら、豊富な経験と知恵があり、必要な局面で厳格な態度を取れる監督だ。
チャンピオンズ・リーグ優勝を狙うクラブに相応しい監督として、最終的に白羽の矢が立てられるのは誰だろうか。決断の時が、迫ってきている。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
代表取締役のカール=ハインツ・ルムメニゲは、ドルトムント代表取締役のハンス=ヨアヒム・ヴァツケや元ドルトムントのマッツ・フンメルスにアドバイスを求め、情報収集に尽力した。
フンメルスは普段であれば、記者の質問に親切に対応するのだが、トゥヘルの監督就任が噂に上がった時には、一言もコメントしていない。そうした事情からも、バイエルンもすぐの招聘に躊躇いを見せた。
バイエルンでは過去、ジョゼップ・グアルディオラがチームドクターのハンス=ヴィルヘルム・ミュラー=ヴォールファルトと衝突したり、アンチェロッティ時代には、アシスタントコーチやフィットネスコーチのトレーニングに対し、選手が反発したりする事態もあった。
アリエン・ロッベンやフランク・リベリといった、“簡単ではない”選手がいるなか、不必要な内部紛争を極力避けたいという首脳陣の意向も考えれば、トゥヘルがバイエルンに断りを入れたことは、結果としてどちらにとっても良かったのかもしれない。
では、実際にバイエルンは、どんな監督を求めているのだろうか。あるいはなぜ、ハインケスがここまで選手からも高く評価されているのだろうか。
元ドイツ代表キャプテンのローター・マテウスは、「彼以上の監督はいない。シンプルなやり方で全てをうまくやっている。これまでチームに欠けていたものが、全て戻ってきた。選手に対するリスペクトに溢れ、虚栄がなく、だが常にハードに取り組む。それをとても楽しみながらやっている点も、大事なのだと思う」とハインケスを評した。
つまり、選手の力を最大限に引き出す手腕と人間性こそが、バイエルンの指揮官には求められているのだ。
そうした観点からも、コミュニケーションを重視し、ドイツ語を話す監督が条件に挙げられ、RBライプツィヒのラルフ・ハーゼンヒュットル、フランクフルトのニコ・コバチ、ニースのルシアン・ファブレといった名前が、ドイツメディアを賑わしている。
また、ドイツ語は話せないが、トッテナムのマウリシオ・ポチェティーノ監督ともコンタクトは取っているという。いずれも、選手へ歩み寄る姿勢を保ちながら、豊富な経験と知恵があり、必要な局面で厳格な態度を取れる監督だ。
チャンピオンズ・リーグ優勝を狙うクラブに相応しい監督として、最終的に白羽の矢が立てられるのは誰だろうか。決断の時が、迫ってきている。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。