【日本代表W杯の軌跡】あまりに苛酷な現実|2006年ドイツ大会・オーストラリア戦

カテゴリ:日本代表

週刊サッカーダイジェスト編集部

2014年06月06日

想定内だったにもかかわらず、残り6分で力尽きる。

残り6分でついに同点にされた日本。そこからの崩れっぷりに、ファンは目を覆い、頭を抱え込んだ。 (C) SOCCER DIGEST

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 とはいえ、名将ヒディンクがそのまま膠着状態を良しとするはずがない。61分、192センチのFWジョシュア・ケネディを投入し、ついにパワープレーのスイッチを入れる。75分にはジョン・アロイージまで入れ、ほぼ4トップのような布陣へ。日本を自陣に釘付けにする。
 
 これをジーコ監督は「防ぎようがなかった」と回顧しつつ、「逆にスペースがあったわけだから、ゴールを奪いにいかなければならなかった」と後悔を口にする。この局面、日本の選手たちは、明らかにスペースを突いてスピーディーにシュートまでたどり着くべき場面で、ボールキープを第一とし、必要以上にクールさを維持しようとしていた。1点を守り切る戦い方や采配など、このチームの教則本には存在しない。ジーコ監督が小野伸二をピッチに送り込んだのも、選手たちに2点目の重要性を説きたいがためだった。
 
 攻めるのか、守るのか。ずっと悩んできた難題が、この大一番でも日本につきつけられる。ワントップになった高原は右往左往し、中田英は2列目に上がり、小野との距離感を保てなくなっていた福西は、ほとんど最終ラインに組み込まれるかたちとなった。前半の洗練された守備組織はいとも簡単に崩壊し、最終ラインが必死にクリアしても、こぼれ球を拾う選手がいない。スタミナを浪費して擦り切れていたのも、残念ながら日本だったということになる。
 
 福西は「完全に2ラインにさせられた。揺さぶりに対応できなかった」と話し、中村は「数的不利になっていた守備陣を責められない」と自戒を込めて振り返った。
 
 84分、89分、ロスタイム。ロングスロー、ミドルシュート、2列目からの突破……。全て想定して練習していた形からの失点だった。
 
「幸運とは、しっかりとしたプランがあってこそ起こり得るものだ」とは、快勝劇を演出したヒディンク監督。記者陣に「ラッキーな勝利だったか」と質問され、淡々とこう切り返した。
 
 どちらにもあった幸運。しかし、日本には相変わらず「プラン」が欠けていた。勝負を嗅ぎわける感覚、戦術眼、精神力、体力、采配……。日本にとって、とてつもなく長く感じられた最後の6分間のなかに、微妙なズレから生じた敗因がそこかしこに散りばめられていた。
 
 
◆2006年6月12日 カイザースラウテルン
日本 1‐3 オーストラリア
 
【得点者】
日=中村(26分)
オ=ケイヒル(84分・89分)、アロイージ(89分)
 
【日本】
GK:川口
DF:坪井(56分茂庭→89分大黒)、宮本、中澤
MF:福西、中田英、駒野、中村、三都主
FW:柳沢(79分小野)、高原
 
【オーストラリア】
GK:シュウォーツァー
DF:ムーア(61分ケネディ)、ニール、チッパーフィールド
MF:エマートン、グレッラ、ウィルクシャー(75分アロイージ)、クリナ
FW:キューウェル、ブレッシャーノ(53分ケイヒル)、ビドゥカ
 
 
※週刊サッカーダイジェスト2006年6月27日号より

上段左から福西、柳沢、中村、坪井、中澤、川口。下段左から中田英、駒野、宮本、高原、三都主。 (C) SOCCER DIGEST

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