【日本代表W杯の軌跡】日本を震わす感涙の初勝利|2002年日韓大会・ロシア戦

カテゴリ:日本代表

週刊サッカーダイジェスト編集部

2014年06月02日

稲本の左足がもたらした日本のワールドカップ初勝利!!

2戦連続のゴールは価値あるものに。稲本はゴールだけでなく、攻守のキーマンとして中盤に君臨した。 (C) SOCCER DIGEST

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 立ち上がり、日本の動きは初戦と違い、明らかにキレていた。開始早々に柳沢敦が相手ボールを追い込み、小野伸二が、稲本潤一が、中盤でスライディングを繰り返す。右サイドに入った明神智和は身体を張ってイゴール・セムショフ、マラト・イズマイロフらと渡り合い、中田英寿は2列目に縛られることのない縦横無尽のランニングと的確な読みで、幾度となくパスカットを披露した。
 
 最初にチャンスをつかんだのも日本である。4分、相手ボールを奪った稲本がそのままドリブルで持ち込み、オープニングショットを放つ。
 
 その後も、トルシエジャパンは盛り上がる会場のムードに後押しされ攻勢を続けた。27分には左サイドを破った中田浩がグラウンダーのクロスをニアサイドに入れる。こぼれ球に反応した中田英のシュートはバーを越えたものの、勢いは完全にホームチームのものだった。ハーフタイムに配られた公式記録には、日本のボール支配率は57パーセントと記されてあった。
 
 ただ、安心して観ていられる展開ではなかった。アンドレイ・ソロマティンにドリブル突破を許し、ヴァレリ・カルピンにDFラインを切り崩された。だが、そんな拮抗した試合に風穴を開けたのは、またしても稲本だった。
 
 51分、中田浩のアーリークロスを柳沢がエリア内で落とすと、フリーの背番号5(稲本)は左足を思いきって振り抜く。ネットが揺れ、スタンドが大きく揺れた。絶叫に近い歓声が沸き起こり、ピッチの上に歓喜の輪が出来上がった。稲本は小野と拳をぶつけ、「俺たちは強いんだ」と言わんばかり満足そうな表情を浮かべていた。
 
 ロスタイムを含め、残りの41分間は手に汗握る興奮の連続だった。ヒヤリとする場面もあったが、青き戦士たちは最後の最後まで逞しく戦った。小野が小憎たらしいまでの冷静さで相手の股を抜き、稲本が身体でシュートを防ぎ、中田英が魂のミドルシュートでバーを叩いた。また、会場の声援は途切れることなく選手たちを支えた。
 
 そして試合終了。その瞬間、全身に鳥肌を感じながら、日本人として生まれ、サッカーを愛し続けてきた幸せを実感する。そんな素晴らしい勝利だった。
 
◆2002年6月9日 横浜
日本 1‐0 ロシア
 
【得点者】
稲本(51分)
 
【日本】
GK:楢崎
DF:松田、宮本、中田浩
MF:戸田、稲本(85分福西)、明神、中田英、小野(75分服部)
FW:柳沢、鈴木(72分中山)
 
【ロシア】
GK:ニグマトゥーリン
DF:ソロマティン、オノプコ、ニキフォロフ、コフトゥン
MF:スメルティン(57分ベスチャストニヒ)、ティトフ、イズマイロフ(52分ホフロフ)、カルピン、セムショフ
FW:ピメノフ(46分シチェフ)


※週刊サッカーダイジェスト2002年6月26日号より

上段左から楢崎、戸田、鈴木、柳沢、松田、中田浩。下段左から中田英、小野、稲本、明神、宮本。 (C) SOCCER DIGEST

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