アトレティコの消耗が激しく…。
【ディ・マリア】
マドリーを反撃に導いた真の立役者は、ディ・マリアだった。たしかに、最終的に出すパスは精度を欠いていたが、これはアトレティコ側のファウルにも起因している。事実、75分までに3人のアトレティコの選手がディ・マリアを倒して笛を吹かれた。
ディ・マリアは爆発的なスピードに乗って、左サイドから一連のクロスを供給。これをマルセロが効果的にサポートし、さらにはCBのセルヒオ・ラモスも前線へ攻め上がった。
クロスは難なく跳ね返されたものの、マドリーにとってこれがもっとも有効な手立てだった。アトレティコがしっかり固めるピッチの中央には、スペースがまったくと言っていいほどなかったからである。
【同点弾】
最終的にこの流れの中からCKが生まれ、S・ラモスがロスタイムの93分に同点弾を決めた。
そのCKの際、ゴール両側のポストに選手を配置しなかったアトレティコの守り方に落ち度があったとするのは間違いだ。アトレティコはフィールドプレーヤー10人でしっかり守っていたし、そのうちの1人はショートコーナーをケア。残り9人をボックスの中に配置していた。
ディエゴ・シメオネ監督がポストに選手を立たせなかったのは、まずはボックス内に飛んでくるボールをクリアし、かつセカンドボールに対してはオフサイドをかけるためだった。シメオネはこの方法論が効果的だと信じていたし、アトレティコがシーズンを通して、セットプレーにおける守備で素晴らしい結果を残してきた事実を考えれば、その判断に異議を挟む理由はまったくない。
【延長戦】
延長戦はマドリーの一方的な展開となった。同点弾を決めた勢いに乗っていたし、アトレティコの消耗が激しかったからだ。
アトレティコは深く引き、マドリーがスペースに侵入してくるのを防ごうとしたが、選手たちは疲弊しきっていた。
ディ・マリアは再三に渡って突破を見せた。マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのも当然のパフォーマンスで、2人をぶち抜いたドリブル突破からのシュートでベイルの決勝ゴールを導いた。
【結論】
戦術的に特筆すべき要素はなかった。
アトレティコの戦術はいつもの通り。アルダとD・コスタを欠いたため、効果的なカウンターを繰り出せなかったとはいえ、ディフェンスの組織力は見事だった。空中戦の強さを活かして先制点を奪ってもいる。ただし、空中戦絡みでいえば、シーズンを通して相手のセットプレーをことごとく封じていながら、ここ一番で失点を許したのは驚きだった。
マドリーは、ついに10度目の欧州制覇を果たした。だが、この決勝戦に限っては、勝利の要因を特定の戦術に見出すのは難しい。
それでもアンチェロティは、ずば抜けたテクニックを持つタレントを擁し、組織的なチームを築き上げた。しかも、CL決勝であれだけ大胆な選手起用をしながら、守備の組織が瓦解しなかったのも見事だった。フィットネスのレベルも落ちなかった。これこそ、最後に勝利を手繰り寄せた要因だったと言える。
分析:マイケル・コックス
マイケル・コックス
イギリス生まれ。一般的なサッカーの報道に飽き足らず、戦術分析に特化した個人サイト『Zonal Marking』を独自に立ち上げて、原稿の掲載を開始。正確で体系的な分析はすぐに人の知るところとなり、英高級紙『ガーディアン』や『ESPN』などにも寄稿する人気ジャーナリストに成長。イギリスにおける戦術分析のスペシャリストとしては、ジョナサン・ウィルソンに継ぐ第二世代に当たる。
マドリーを反撃に導いた真の立役者は、ディ・マリアだった。たしかに、最終的に出すパスは精度を欠いていたが、これはアトレティコ側のファウルにも起因している。事実、75分までに3人のアトレティコの選手がディ・マリアを倒して笛を吹かれた。
ディ・マリアは爆発的なスピードに乗って、左サイドから一連のクロスを供給。これをマルセロが効果的にサポートし、さらにはCBのセルヒオ・ラモスも前線へ攻め上がった。
クロスは難なく跳ね返されたものの、マドリーにとってこれがもっとも有効な手立てだった。アトレティコがしっかり固めるピッチの中央には、スペースがまったくと言っていいほどなかったからである。
【同点弾】
最終的にこの流れの中からCKが生まれ、S・ラモスがロスタイムの93分に同点弾を決めた。
そのCKの際、ゴール両側のポストに選手を配置しなかったアトレティコの守り方に落ち度があったとするのは間違いだ。アトレティコはフィールドプレーヤー10人でしっかり守っていたし、そのうちの1人はショートコーナーをケア。残り9人をボックスの中に配置していた。
ディエゴ・シメオネ監督がポストに選手を立たせなかったのは、まずはボックス内に飛んでくるボールをクリアし、かつセカンドボールに対してはオフサイドをかけるためだった。シメオネはこの方法論が効果的だと信じていたし、アトレティコがシーズンを通して、セットプレーにおける守備で素晴らしい結果を残してきた事実を考えれば、その判断に異議を挟む理由はまったくない。
【延長戦】
延長戦はマドリーの一方的な展開となった。同点弾を決めた勢いに乗っていたし、アトレティコの消耗が激しかったからだ。
アトレティコは深く引き、マドリーがスペースに侵入してくるのを防ごうとしたが、選手たちは疲弊しきっていた。
ディ・マリアは再三に渡って突破を見せた。マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのも当然のパフォーマンスで、2人をぶち抜いたドリブル突破からのシュートでベイルの決勝ゴールを導いた。
【結論】
戦術的に特筆すべき要素はなかった。
アトレティコの戦術はいつもの通り。アルダとD・コスタを欠いたため、効果的なカウンターを繰り出せなかったとはいえ、ディフェンスの組織力は見事だった。空中戦の強さを活かして先制点を奪ってもいる。ただし、空中戦絡みでいえば、シーズンを通して相手のセットプレーをことごとく封じていながら、ここ一番で失点を許したのは驚きだった。
マドリーは、ついに10度目の欧州制覇を果たした。だが、この決勝戦に限っては、勝利の要因を特定の戦術に見出すのは難しい。
それでもアンチェロティは、ずば抜けたテクニックを持つタレントを擁し、組織的なチームを築き上げた。しかも、CL決勝であれだけ大胆な選手起用をしながら、守備の組織が瓦解しなかったのも見事だった。フィットネスのレベルも落ちなかった。これこそ、最後に勝利を手繰り寄せた要因だったと言える。
分析:マイケル・コックス
マイケル・コックス
イギリス生まれ。一般的なサッカーの報道に飽き足らず、戦術分析に特化した個人サイト『Zonal Marking』を独自に立ち上げて、原稿の掲載を開始。正確で体系的な分析はすぐに人の知るところとなり、英高級紙『ガーディアン』や『ESPN』などにも寄稿する人気ジャーナリストに成長。イギリスにおける戦術分析のスペシャリストとしては、ジョナサン・ウィルソンに継ぐ第二世代に当たる。