戦術分析スペシャリストが読み解く「勝負の深層」 チャンピオンズ・リーグ決勝

カテゴリ:ワールド

マイケル・コックス

2014年05月29日

アルダとD・コスタの不在が響いた。

両チームの先発メンバーとフォーメーション。アトレティコのジエゴ・コスタは明らかに本調子ではなく、開始9分でアドリアンと交代。

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 レアル・マドリーが逆転でアトレティコ・マドリーを破り、念願の「デシマ」、すなわち10回目のチャンピオンズ・リーグ決勝を成し遂げた。
 
 大会史上初めて「ダービーマッチ」となったその決勝戦を、戦術的観点から改めて振り返ってみたい。勝負を決定づけたポイントは、いったいどこにあったのか――。
 
 戦術分析に特化したウェブサイト『Zonal Marking』から、翻訳・抜粋してお届けする。
 
――◆――◆――
 
 試合のポイントは、アトレティコ・マドリーがいかにしてボールを奪い返そうとするか、その点にあった。
 
 アトレティコは、前線からハイプレスを仕掛け、ディフェンスラインがアグレッシブにアタックする戦い方もできれば、深目に引き、ストライカーに中盤をケアさせる戦い方もできる。理屈で考えれば、スピードのあるレアル・マドリーに対抗するためには後者の戦術が効果的だ。結果、試合はスローな展開で、辛抱強いプレーを強いるものとなった。
 
 アトレティコは、ガレス・ベイルとクリスチアーノ・ロナウドをボールから遠ざけることに成功した。90分間でいかにもマドリーらしいカウンターが、ベイルとロナウドを媒介する形で展開されたのはわずか2回。しかもそのカウンターはどちらも、不用意な横パスを奪ってのものだった。
 
 マドリーのカウンターがうまく機能しなかった理由は他にもある。アトレティコの選手のポジショニングの良さ、カウンターを止めるためにシニカルなファウルをためらわなかった点、そしてベイルとロナウドのプレーが単純に冴えなかった点などだ。
 
 さらには、マドリーが球際の競り合いに勝てず、アトレティコの選手を本来のポジションからおびき出せなかった点も挙げられる。とくにサミ・ケディラは力感や粘り強さを発揮できなかった。
 
【アトレティコの攻撃】
 アトレティコのオープンプレーはパッとしなかった。コケはインサイドレフトのポジションからカウンターを仕掛けようとしたが、アルダ・トゥラン(故障欠場)とジエゴ・コスタ(怪我を押して出場も、開始9分に退場)の不在が響いた。素早いパス交換が見られず、スピードとアグレッシブさがなかった。
 
 D・コスタの戦線離脱が痛かったのは、それまでの対戦でマドリーのCB陣を手玉に取っていたからでもある。このエースの穴を埋めるべく、ダビド・ビジャは果敢にプレーしたが、アドリアン同様、得点機を作り出せなかった。

試合終盤での両チームのメンバーとフォーメーション。マドリーは明らかに4-4-2、アトレティコは4-1-4-1に。

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【アトレティコ 4-1-4-1へのシステム変更】
 ハーフタイムでの注目点は、ディエゴ・シメオネ監督が4-1-4-1にシステムを変更したことだった。アトレティコが1-0でリードしていた事実を考えれば、中盤にMFを一枚増やして、より慎重なアプローチを取るのは理に適っていた。
 
 コケが中央に動き、アドリアンが左サイドに張り出したために、アトレティコはマドリーのSB、とくに右のダニエル・カルバハルを効果的にケアできるようになった。
 
 このシステム変更は、アトレティコの推進力も高める結果に。後半最初の15分間は、アドリアンがカルバハルを困難に陥れる場面が何度か見られた。
 
【アンチェロッティの対応】
 試合開始から1時間近くが経過し、カルロ・アンチェロッティ監督は効果的なカードを切る。ファビオ・コエントランに代えて左SBにマルセロを投入。これで左サイドの攻撃が活性化し、相手への圧力が高まった。
 
 アンチェロッティは同時に、ケディラを下げてイスコを投入。アシエル・イジャラメンディを投入するよりもはるかに攻撃的なオプションで、創造性を引き出す狙いがあった。
 
 マドリーの中盤は、これで10番が2人(イスコとルカ・モドリッチ)とウイングが2人(アンヘル・ディ・マリアとベイル)という超攻撃的な構成に。この時点で、システムは完全に4-4-2となっていた。
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