シャルケでの日々を経て、想いを公言する強さを身につけた内田。
「足の指が折れているかもしれないと言われたけど、走ったよ。内田やるなって思ってもらいたいじゃん」
鬼軍曹フェリックス・マガトのもとで、始まった欧州での選手生活。シャルケでのレギュラー争い、初めてのチャンピオンズ・リーグ……。刺激は溢れていた。
1年目の2010-11シーズン。内田はマガトから、𠮟責を受ける。ドイツ語は分からなくても、監督が立てる指2本で、何を責められているかは理解できた。
「チャンピオンズ・リーグとブンデスリーガの2試合で、僕が突破を許した相手がゴールを決めていた。マガトが言いたかったのは、『2試合連続だぞ!』ってことだったんだ。すっごい気持ちを入れていかないと、やられちゃうんだよ」
鬼軍曹フェリックス・マガトのもとで、始まった欧州での選手生活。シャルケでのレギュラー争い、初めてのチャンピオンズ・リーグ……。刺激は溢れていた。
1年目の2010-11シーズン。内田はマガトから、𠮟責を受ける。ドイツ語は分からなくても、監督が立てる指2本で、何を責められているかは理解できた。
「チャンピオンズ・リーグとブンデスリーガの2試合で、僕が突破を許した相手がゴールを決めていた。マガトが言いたかったのは、『2試合連続だぞ!』ってことだったんだ。すっごい気持ちを入れていかないと、やられちゃうんだよ」
この時期、内田はよく試合に向かう気持ちについても話してくれた。Jリーグでは、強がって気持ちを隠すことで、自身を支え戦ってきた。しかし、それだけでは越えられない壁をドイツで見つけた。そんな彼はどこかとても嬉しそうだった。
チャンピオンズ・リーグのベスト8の風景は、内田にとって新たなる指針となった。
「このステージに立って初めてCLは面白くなるんだよね」
ワールドクラスの選手たちとの対戦は、さらなる貪欲さを内田にもたらした。未知の世界を知ったことで、サッカーを追求していく楽しさを発見できた。
マガトの次に指揮を執ったステフェンス監督は、気持ちの漲ったプレーをする選手を重用した。就任当初、指揮官は内田を起用しなかった。試合に出られない時期、苦し紛れに「移籍しちゃえばいいでしょ」と言って、現状を笑い飛ばすこともあったが、投げやりになることは一切なかった。
内田へ大きな期待を抱いていた指揮官が、奮起を促そうとしていた部分もある。気持ちを見せることで、さらに成長できると考えたのだろう。その後、出場チャンスを得た内田は、そのままレギュラーポジションを取り戻している。
ワールドカップ直後、「どんな監督にも必要とされる選手にならなくちゃいけないんだ」と話していた内田は、シャルケで4人の指揮官の下で定位置を獲得し、主力として信頼を得ている。
負傷での離脱を経験しながら、それでもシャルケの右サイドバックへ戻ってきた内田。この4年間、心が折れるような瞬間は、何度もあったに違いない。それでもまた立ち上がる。立ち上がり、さらなる挑戦へ自分を駆り立ててきた。そんな時間があるからこそ、自分を信じられるのだ。
「悔しさを晴らすとか、そういうことを考えたら絶対に失敗するでしょ」
そんな風に話す内田を想像するのは簡単だ。だからこそ、「4年前のイメージを払拭したい」と彼が口にしたことに驚いた。
しかし、同時にこうも思う。自身の想いを公言できるだけの強さを内田が身につけたということ。そして、それほどに南アフリカでの日々が、内田の心に刻まれているということを。
どんな結果や成果を得れば、屈辱を晴らせるのかは分からない。それはきっと本人も同じだと思う。すべての試合に出場し、前回大会以上の結果を残せたとして、たとえ優勝したとしても、内田のサッカー人生が完結するわけではないのだから。悔いや後悔があって当然だ。
南アフリカから始まった4年間、あらゆる武器を身につけ、それを磨いてきた。そんな自身の成長と、さらなる欲やビジョンをブラジルで見つけられたら、それもまた貴重な前進のきっかけとなるはず。
内田篤人の新しいチャプターがブラジルで始まるのだ。
文:寺野典子(フリーライター)
チャンピオンズ・リーグのベスト8の風景は、内田にとって新たなる指針となった。
「このステージに立って初めてCLは面白くなるんだよね」
ワールドクラスの選手たちとの対戦は、さらなる貪欲さを内田にもたらした。未知の世界を知ったことで、サッカーを追求していく楽しさを発見できた。
マガトの次に指揮を執ったステフェンス監督は、気持ちの漲ったプレーをする選手を重用した。就任当初、指揮官は内田を起用しなかった。試合に出られない時期、苦し紛れに「移籍しちゃえばいいでしょ」と言って、現状を笑い飛ばすこともあったが、投げやりになることは一切なかった。
内田へ大きな期待を抱いていた指揮官が、奮起を促そうとしていた部分もある。気持ちを見せることで、さらに成長できると考えたのだろう。その後、出場チャンスを得た内田は、そのままレギュラーポジションを取り戻している。
ワールドカップ直後、「どんな監督にも必要とされる選手にならなくちゃいけないんだ」と話していた内田は、シャルケで4人の指揮官の下で定位置を獲得し、主力として信頼を得ている。
負傷での離脱を経験しながら、それでもシャルケの右サイドバックへ戻ってきた内田。この4年間、心が折れるような瞬間は、何度もあったに違いない。それでもまた立ち上がる。立ち上がり、さらなる挑戦へ自分を駆り立ててきた。そんな時間があるからこそ、自分を信じられるのだ。
「悔しさを晴らすとか、そういうことを考えたら絶対に失敗するでしょ」
そんな風に話す内田を想像するのは簡単だ。だからこそ、「4年前のイメージを払拭したい」と彼が口にしたことに驚いた。
しかし、同時にこうも思う。自身の想いを公言できるだけの強さを内田が身につけたということ。そして、それほどに南アフリカでの日々が、内田の心に刻まれているということを。
どんな結果や成果を得れば、屈辱を晴らせるのかは分からない。それはきっと本人も同じだと思う。すべての試合に出場し、前回大会以上の結果を残せたとして、たとえ優勝したとしても、内田のサッカー人生が完結するわけではないのだから。悔いや後悔があって当然だ。
南アフリカから始まった4年間、あらゆる武器を身につけ、それを磨いてきた。そんな自身の成長と、さらなる欲やビジョンをブラジルで見つけられたら、それもまた貴重な前進のきっかけとなるはず。
内田篤人の新しいチャプターがブラジルで始まるのだ。
文:寺野典子(フリーライター)