岩政　それまでに、日本でソシオになれる制度を作ろうとした人はいなかったんですか？
 
浜田　いなかったですし、バルサは海外でソシオを募集しようという発想がなかったです。
 
岩政　じゃあ、浜田さんはないものを作ろうとしたわけですね。なくて当たり前だったものを、あったほうが良いと思って作り直したと。その感覚はずっと？
 
浜田　今も同じです。解決したほうが良いことは、日本サッカー界にはいっぱいあります。今で言えば、高体連と中体連の指導者の働きすぎ問題。平日まるまる仕事をして、さらに土日であんなに働いているのは、何とかしたほうがいいですよね。そういう問題を事業として解決できる仕組みができればとは思います。
 
岩政　解決すべき問題はたくさんあるのに、みんなが方法を思いついていないわけですね。
 
浜田　プロスポーツビジネスのセミナーだとかに行くと、すぐに集客に話が行ってしまいますが、トップチームは最後の打ち上げ花火的なもので、問題は他にもてんこ盛りです。例えば、育成年代の指導者が、じっくり腰を据えて選手を育てられる環境がない問題。Jクラブだと多くのコーチが個人事業主で１年契約なんです。そうすると目の前の選手を育てるよりも、来季の自分の契約が更新されるかどうかに意識が行く。そうすると目に見える結果が必要なので勝利至上主義になる。なんらかの仕組みを作れば、目先の勝ちにこだわらずに育成に意識を置けるかもしれません。
 
岩政　今の枠組みを見直して、細かいところに目を配るべきタイミングが来ているのかもしれません。

浜田　Ｊリーガーが現役の時に指導を学べる仕組みも必要ですよね。スペインだと、ユースの３年目にもなると、自分がプロになれないと分かるから指導の道に入る選手も多いんです。でも、日本は誰を昇格させるか最後まで決まらないので、選手が進路を判断するのが難しくなっています。
 
　Ｊクラブ下部組織の選手が高体連に流れるケースが増えているのも、高体連は全チームに話を聞けるからですよ。それも仕組みを作れば解決できると思うんです。あるクラブのトップチームには左サイドバックは必要ないけど、他のクラブが必要としているケースがある。そのマッチングを上手くできるシステムがあればいい。
 
岩政　選手の能力をしっかり判定できる人間が少ないのかもしれません。うちのチームでは昇格できないけど、他のチームだったらと言って早めに出してあげるとか。個別に対応できる人材がいないと、最後まで粘らせることになりますから。
 
浜田　そうなんです。仕組みとしてそこをいじれば、みんなが気持ちよく取り組めますよね。目につくところはいっぱいありますよ。

＜＜第４回『スペインは”崩しの公式”を作っている。日本も”守破離”があるのだから…』は28日17時公開予定＞＞

【プロフィール】
浜田満（はまだ・みつる）／1975年、奈良県出身。株式会社Amazing Sports Lab Japan代表取締役。関西外国語大学卒業後、メーカー、商社、大使館勤務等、３回の転職を経て、欧州サッカークラブのマーチャンダイジングライセンスビジネスに携わる。2004年6月、FCバルセロナソシオの日本公式代理店として独立。現在は、FCバルセロナキャンプ、FCバルセロナスクール、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジのプロデュース、コンサルティングなどを行なっている。
 
岩政大樹（いわまさ・だいき）／1982年１月30日、山口県出身。Ｊ１通算290試合・35得点。Ｊ２通算82試合・10得点。日本代表８試合・０得点／鹿島で不動のＣＢとして活躍し、2007年からＪ１リーグ３連覇を達成。日本代表にも選出され、2010年の南アフリカW杯メンバーに選出された。2014年にはタイのBECテロ・サーサナに新天地を求め、翌2015年にはＪ２岡山入り。岡山では2016年のプレーオフ決勝に導いた。今季から在籍する東京ユナイテッドFCでは、選手兼コーチを務める。