日本を救った中村航輔は、川島永嗣の背中にどこまで迫れるのか

カテゴリ:日本代表

清水英斗

2017年12月11日

代表デビュー戦でここまで堂々とやれる図太さも、GKには欠かせない。

 この柏レイソル育ちのGKは、何よりもシュートストップの準備が素晴らしい。その瞬間、いつもバランスの取れた構えを作り、シューターに正対している。一般的には、相手のラストパスに対してポジショニングを修正すると、GKはボディバランスが崩れ、逆を突かれたシュートに反応できなくなりがち。ところが、中村はその瞬間、左にも右にも流れず、いつもニュートラルに構えている。だから、どんなボールにも反応できる。そこからボールに飛びつく動作にも無駄がない。打った、せーの、ドンッ、で飛びつくのではなく、打った、ドンッ! まるで猫がボールに飛びつくようだ。
 
 この反応の早さが可能になるのは、タイミングの合わせ方がうまいからだろう。人間の身体の構造上、GKはセービングするとき、身体を一度縮めてから跳ばなければならないが、いわゆるプレジャンプのように大きな予備動作を取ると、シュートにタイミングが合わなくなる。そして、崩れたバランスを整えてから再度跳ぶので、セービングが遅れる。
 
 ところが、中村はもっとステップが細かい。プレジャンプというより、プレスプリングくらいの弾み方。タイミングを合わせてセーブに行く。欧州では標準的なGK像だが、これができる日本人GKは少ない。
 
 中村は芯のあるGKだ。いや、芯そのものだ。プラスアルファの評価点はあまりない。身長は184センチとGKとしては小柄。キックの質が低いのは難点。スペースカバーが広いタイプでもない。現代サッカー的な要素を持たないGKとも揶揄できる。しかし、GKにとっていちばん大切なのは何か? それはやはりセービングだ。GKは結果を変えられるポジション。その芯は間違いなく持っている。加えて、代表デビュー戦でここまで堂々とやれる図太さも、GKには欠かせない。
 
 もちろん、まだまだ川島永嗣を脅かしたとは言えず、本人が語るように、すべてにおいてレベルアップしなければならない。それほど川島は日本人GKの中では図抜けたレベル。その背中は決して近くはない。
 
 同日に行なわれた韓国対中国で、22歳以下の選手を6人起用した中国代表のマルチェロ・リッピ監督は、「22歳を若いと見るのは中国だけではないか。若いというのは18歳前後だと私は考えている」と語った。
 
 GKは特殊なポジションとはいえ、本来ならば、いつ主力になってもおかしくはない。22歳の中村が、川島の背中にどこまで迫ることができるか。ロシアワールドカップに向け、楽しみが増えた。
 
取材・文●清水英斗(サッカーライター)
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