【現地発】最悪のスタートから現在は9戦無敗! レバークーゼンを変貌させた者たち

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2017年12月01日

勝ったにもかかわらず選手に謝罪した指揮官

現役時代は点取り屋として国内だけでなく欧州制覇も果たし、ドイツ代表にも名を連ねた一方で、重い怪我や悪性の脳腫瘍などにも苦しめられたヘルリッヒ。指導者として今後、どれだけの実績を積み上げられるか。 (C) Getty Images

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 ヘルリッヒ監督の柔軟な戦術の使い分けも、好調の理由に挙げられる。相手の出方や試合展開に応じて4バック、3バックを使い分け、選手起用にも大胆さが見られるのが、その采配の特徴だ。
 
 フランクフルト戦では、本来FWのドイツ代表ユリアン・ブラントを右ウイングバックとして起用。この勇気を持った采配が、チームを勝利に導いた。ブラントが素早い動きでボールを奪い、そこからのカウンターがフォラントのゴールに繋がったのだ。
 
 その優れた戦術眼の片鱗は、実は開幕のバイエルン戦でも見られていた。前半は完全に押し込まれて0-2とリードを許したが、後半、急きょ3バックに変更すると、そこから次々にチャンスを作り出していった。
 
「結果的にゴールを奪えなかった」「バイエルンがギアを落とした」という点を考慮する必要はあるが、それでもプレー内容からは「もしや」のワクワク感があった。試合後の記者会見で、ヘルリッヒはこう語っている。
 
「自分たちのパフォーマンスを恥ずかしがる必要はない。我々は流れから、ゴールチャンスを作り出した。後半、システム変更し、勇敢に攻撃を仕掛けた。決定機の数なら、前半は2対2、後半は7対5で我々の方が多かった」
 
 チームのプレーには常に敬意を払い、賛辞を忘れないヘルリッヒはまた、自分の非やミスを素直に認め、謝る。ケルンとのダービーの後、2-1で逆転勝利を飾ったにもかかわらず、控室で選手に謝罪をしたという。理由はこうだ。
 
「ケルンの先制ゴールのきっかけとなったフレデリク・ソーレンセンのロングスローを、試合に向けた準備で取り上げていなかったから」
 
 指揮官のこうした人間性を選手も信頼して、ついて行っている。
 
 現在、6位にまで浮上してきた。だが、ここがゴールではなく、狙うはさらに上。新生レバークーゼンが今、面白い!
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
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